工藤公康の野球ファイル《シーズン2》

野球×サッカーの名将対談が実現! 工藤公康が共感した森保監督の「今、変わるべき」姿勢

構成:スリーライト

「これまで通り」からの脱却へ

森保監督は世界一を目指すためにも「今、変わることが必要」と話す 【写真:スリーライト】

森保 実はサンフレッチェ広島で監督をしていた頃、J1でリーグ優勝も達成できて、「コンセプトはできるだけこれまで通りで」と思っていたんです。でもやっぱり「これまで通りではダメなんだ」と思い知らされたきっかけがありました。結果が出ていない時にミーティングで「監督、これまで通りなんですか? これからなんですか?」と選手から言われたことがあって。

 その瞬間、私は「何を言われているんだろう?」と不思議に思いながらも、「これからだ!」と思わず言ったんですね。もちろん、「これまで通り」で継続してやらなければいけないこともありますが、状況も変わりますし、シーズンによって選手も変わります。「これまで通り」というのは、レギュラーとして戦ってきた一部の人たちだけが細部までわかっているけれど、移籍してきた選手やあまり試合に出ていない若手には実は共有されていなかったんだなと痛感したんです。「これまで通りではダメなんだな」と感じた私の失敗談ですね。

 野球の侍ジャパンは世界一を獲りましたが、サッカー日本代表は「これまで通り」では世界一を獲れないと思っています。世界の価値観が変わっていく中で、日本代表がよりパワーアップするために新しい価値観を取り入れていくことはすごく大切だと思っています。そこはチャレンジさせていただいています。

工藤 今、森保監督が目指しているところは、やはり世界一ですか?

森保 「日本代表はW杯でベスト8すらたどり着いていないじゃないか」と笑う方もいるかもしれません。でも2018年のロシア大会、2022年のカタール大会の時に、「壁を越えられるだけの力はついているんだ」というところを選手たちは見せてくれました。

 もちろん現実的な目標も意識しなければいけませんが、W杯で優勝を目指すからこそ、今、どんな努力をして、成長しなければいけないかが見えてきます。そのために今を変えていくことに取り組んでいけたらなと思います。

工藤 私も「現状維持は後退のはじまり」のように考えていました。森保監督の「新しいもの」を取り入れていく姿勢は、選手たちがもっと強くなっていくために、ずっと続いていくものではないかなと思います。

森保 背中を押していただいてありがとうございます! 今は「代表監督」という役割を務めさせていただいていますが、「自分のチーム」ではありません。私が監督を退いた後も日本サッカーはずっと発展し続けていくものです。その意味では、自分がやっていることの枠にとどまっていてはいけないなと考えさせられます。選手たちは今、世界の競争の中で、自分たちのポジションを掴むためにたくましく生き抜いてくれているので、自分も置いていかれないようにとは思いますね。

工藤 選手たちに活躍してほしいと思うだけではなく、選手たちのもっと先の未来も視野に入れているんですね。

森保 はい。もちろん勝利は大事ですが、勝利と成長が両方あるのが一番望ましいと思います。できる限りチャレンジしていきたいですね。

《コラム後編に続く/動画は後編まで公開中!》

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