小田凱人の考える「ヒーロー像」とは? 憧れ続けた幼少期の思い出とプロになったいま思うこと
【写真:ロイター/アフロ】
9歳のとき、左脚の骨肉腫を手術したことで車いす生活を余儀なくする。「サッカー選手になりたい!」という夢は絶たれたが、偶然出会った車いすテニスでいま世界中から大注目を集めている。驚くべきはラケットを初めて手にしてから、わずか8年での偉業達成である。
◎なぜ、驚異的な記録を短期間で達成することができたのか?
◎なぜ、大病を患ったのに前向きでいられたのか?
◎なぜ、厳しい世界で勝ち続けられるのか?
◎なぜ、プロでも「楽しさ」維持し続けられるのか?
本書は、小田凱人の人生をひとつずつ紐解きながら、「最速で夢を叶えた秘訣」を明らかにする。
小田凱人著『I am a Dreamer 最速で夢を叶える逆境思考』から、一部抜粋して公開します。
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ヒーローになりたい
2022年4月、僕は15歳のときにプロの車いすテニスプレーヤーになった。子どものころに描いていた夢の一つが叶った瞬間である。それまでは、自分のために活動をしてきた一方、プロに転向すると職業として活動をすることになる。
つまりスポーツ選手として社会に飛び込むことになるのだが、プロとして社会にどのような影響をもたらしたいかを考えたとき、僕は「ヒーローになる」のが自分らしいと感じたのだ。
なぜヒーローなのか。小田凱人が考えるヒーローとはなにか。
一言で「ヒーロー」といっても少し漠然としているから、僕がヒーローになりたいと考えるようになったきっかけを紹介したい。
僕がまだ幼かったころ、父の影響で大好きになった。どれくらい好きかというと、父が子ども時代に観ていた仮面ライダーや、V3といった過去のシリーズまですべて観ているほどだ。父と一緒に、バイクのヘルメットを仮面ライダー風にカスタマイズして遊んだりもした。
もちろん子ども心に憧れていた存在なので、仮面ライダーに対して深い哲学を持っているわけではない。あくまでフィクションの世界の存在として純粋に「かっこいい」と感じていた。
やがて、僕の身近に、まるで仮面ライダーのような「ヒーロー」が現れることになる。その人物は、人呼んで「ドイショウ」。本名は伏せるが、名字と名前を省略したニックネームだ。僕が小学1年生のころに出会ったのだが、そのとき彼は小学5年生だった。爽やかで、イケメンで、足が速くて、サッカーもうまい。絵に描いたような、かっこいいお兄さんだったのだ。
だが、相手は4学年も上のお兄さんだ。小学1年の僕なんか相手にしてくれるわけがない。だが僕は、どうしてもあのかっこいいドイショウとお近づきになりたくて仕方なかった。
そしてある日、下校中にドイショウに勇気を振り絞って、「今度サッカーをやるときは仲間に入れて?」と話しかけてみた。
すると次の日、ドイショウはサッカーボールを持って僕の家を訪ねてきてくれたのだ。ちなみに僕が住んでいる近所では、ドイショウはちょっとしたアイドル的存在だったので、僕の母親も、「あのドイショウが家に来た!」と驚いていた。親たちの間でも「あの」が付くくらい、彼の存在は大きかったのだ。
僕はもっと遊んでほしくて、当時、ドイショウやその同学年の友達が遊んでいたニンテンドーDSを親にねだって買ってもらい、さらに仲良くなっていった。公園の滑り台の上で、一緒に対戦ゲームをしたことは今もはっきり覚えている。
そうした関係がしばらく続き、やがて、ドイショウは僕の家に繰り返し遊びに来てくれるようになった。
僕のヒーローの原点は、仮面ライダーだと述べた。ただ、それはあくまでテレビの向こう側、つまりファンタジーの世界だから手は届かない。
そういったもどかしさもあって、仮面ライダーのような存在を身近な現実にも求めていたのかもしれない。そして僕の前に颯爽と現れたのが、まさにドイショウだったのだろう。
彼と接するなかで、僕は「人へのやさしさ」を教えてもらった。
小学1年生のころの僕は、ものすごい勇気を振り絞って、小学5年生の憧れのヒーローに話しかけた。
ほんとうならこれだけ年の離れた子を相手にするなんて、楽しいはずはなかっただろう。けれども彼は一緒にサッカーをしてくれたり、一緒にゲームをしてくれたりと分け隔てなく接してくれた。
それはひとえに、彼の持つ「やさしさ」によるものだ。
僕は彼の背中を見て、こういう人になりたいと考えるようになった。
プロの車いすテニスプレーヤーになった今、僕もテニスを通じて、ドイショウのように子どもたちに憧れてもらえるようなヒーローになりたいのだ。
僕は、「自分らしく」「自由である」ことを貫くのが、小田凱人としてのヒーロー像だと考えている。
「何のためにテニスをしているのか?」そう問われたとき、単に「生活のため」「ご飯を食べるため」であれば、僕は職業としてのテニスを選んでいなかっただろう。お金だけのためなら、稼ぐ方法は世の中にたくさんある。
僕がテニスをするのは、「自分らしくあるため」。つまり、稼ぎや、生活のためだけでは計れない、「自分だけの美学」を持つことを、これからの子どもたちにぜひ知ってほしいのだ。
車いすに乗って、テニスコートを駆け回り、全力でボールを追いかけ、精一杯ラケットを振り切る僕の姿を見て、ぜひ「自由」を感じ取ってほしい。
その先に、自分だけの「夢」と「美学」を描いてほしいと願う。
書籍紹介
【写真提供:KADOKAWA】
9歳のとき、左脚の骨肉腫を手術したことで車いす生活を余儀なくする。「サッカー選手になりたい!」という夢は絶たれたが、偶然出会った車いすテニスでいま世界中から大注目を集めている。驚くべきはラケットを初めて手にしてから、わずか8年での偉業達成である。
◎なぜ、驚異的な記録を短期間で達成することができたのか?
◎なぜ、大病を患ったのに前向きでいられたのか?
◎なぜ、厳しい世界で勝ち続けられるのか?
◎なぜ、プロでも「楽しさ」維持し続けられるのか?
本書は、小田凱人の人生をひとつずつ紐解きながら、「最速で夢を叶えた秘訣」を明らかにする。
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