卓球女子団体は「銀メダル以上」が確定 日本と張本美和を復活させた“割り切り”

大島和人

第4試合は「連続16ポイント」の猛攻

第4試合は2セット目の途中から一方的な展開に 【写真は共同】

 第4試合も「入り」は難しい展開となった。ドイツのシャオナ・シャンがポイントを重ね、一時は2-6と4点のビハインドを追う展開だった。

「相手は異質な選手で、最初は慣れていませんでした。1ゲーム目にすごくリードされて、『この試合も負けてしまうのではないか?』という不安があのときは頭をよぎりました。でも『最後の1球まで諦めない』ことが自分のオリンピックの目標で、平野選手からかけてもらった『思い切って』という言葉を心に持ちながらやったのが、1ゲーム目に挽回(ばんかい)できた理由です」(張本)

  張本は第2試合からアプローチを変えて成功した。

「第2試合のときはすごく戦術を立てて試合に臨んだのですが、あまりハマりませんでした。『第4試合は戦術なしに思い切ってやる』『来たボールを絶対に返してやる』という気持ちで戦いました。初めての対戦でしたが、思い切ってできました」

 彼女は第4試合を11-8、11-5、11-0のストレートで快勝し、3試合を先取した日本がドイツを下した。張本は第2ゲームの途中から、怒涛の16連続ポイントで試合を締めている。この競技で第3セットのようなラブゲームは珍しいが、「連続16ポイント」はもっと珍しい。

 張本は第4試合のラブゲームをこう振り返る。

「正直テンラブ(10-0)になってから気づきました。とにかく1球1球、思い切って、自分のやるべきことをやろうとずっと考えていました。思い切って、最後で1球まで諦めず頑張れたかなと思います」

 試合後の心境はこう明かしてくれた。

「今はメダルが取れて嬉しいより、第4試合に勝ててホッとしている気持ちが一番大きいです。第1ゲームもリードされていた状況で、『2試合とも負けてしまうのではないか?』『チームに迷惑をかけてしまうのではないか?』という気持ちが一番大きかったです」

最強・中国にどう立ち向かうのか?

卓球女子団体は中国が4連覇中 【写真は共同】

 最終的に日本はドイツを3-1で退けた。渡辺監督は展開と内容をこう説明する。

「早田選手を温存しながら決勝に上がれました。決勝のオーダーはまだ決めていませんが、あと1試合ですから総力戦で悔いが残らない戦いをしたい」

 負傷の早田選手は「治療優先」で、準決勝後は取材エリアに現れなかった。渡辺監督は早田の症状についてこう説明していた。

「徐々に良くなってきています。治療やケアもすごく丁寧に熱心に、そこまでやるのかというくらい取り組んでいます。今日は選手村に帰ったら治療に行くと言っていました。JOCさんがすごくバックアップしてくれて、今回は3試合ともトレーナーとドクターがついてきてくれました。本当にすごく安心して戦えています」

 中国は言わずと知れた卓球の「覇権国家」で、女子団体は2008年の北京五輪で導入されて以後、4連覇中だ。ただし2024年4月に釜山で開催された世界卓球では、日本が2-3と中国を追い込んでいる。

 渡辺監督は言う。

「一度ああいう試合ができたので、今回はやはり『中国に勝たないと』という気持ちです。釜山よりは強くなっていますので、本当に勝ちにいくつもりです」

 大切なのは「先手」だ。

「1ゲーム目を取られるともう劣勢になるので、どの試合もどのゲームもスタートダッシュをまずしてほしい。中国選手は緊張してくれないと崩れなくて、リードすると本当にさらに強くなる。プレッシャーをかけられるような戦いをしていきたいと思っています」(渡辺監督)

 張本は決勝戦に向けて、こう抱負を口にしていた。

「中国だからどうするというのでなく、向かっていく気持ちはもちろん変わらず、しっかり自分のプレーに集中して頑張りたい。目指すのは最初から金メダルですけど、考えすぎないように思い切って自分のプレーができれば、結果はついてくるかなと思います」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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