卓球女子団体は「銀メダル以上」が確定 日本と張本美和を復活させた“割り切り”

大島和人

日本の女子団体はドイツを下して銀メダル以上を確定させている 【写真は共同】

 卓球の女子団体は8月8日(以下、現地時間)に準決勝の2試合を行った。日本は前日に男子団体が同じ準決勝で痛恨の逆転負けを喫していたが、女子はドイツを通算3-1と下して決勝進出を決めた。つまり「銀メダル以上」を確定させ、10日に金メダルを懸けて中国と対戦する。

 日本にとって決して楽な試合ではなかった。エースの早田ひなが左前腕を傷めて完調ではなく、1回戦に続いて準決勝でも負担の少ないダブルスのみの出場となっている。第1試合のダブルスは早田ひな、平野美宇組がゲームカウント3-1で勝利したものの、第2試合のシングルスは張本美和がアネット・カウフマンに0-3と完敗した。

 日本は早田の負傷もあり16歳の張本を第2試合、第4試合とシングルス2試合に起用するオーダーを組んでいた。その張本の完敗で、コート内には危機感が漂い始めた。

張本を助けた先輩たち

今回の女子団体は16歳の張本、24歳の早田と平野の3人で構成されている 【写真は共同】

 誰より狼狽(ろうばい)していたのは、本人だったかもしれない。張本はこう振り返る。

「第2試合は負けて悔しかったですし、4試合目は自分に回るので、そこですぐ切り替えてプレーできるのかすごく不安でした」

 張本が第2試合で敗れたカウフマンは18歳の新鋭。左利きで、183センチと大柄な選手だ。

「サーブもYGサーブなど、普通の女子選手は出さないものでした。少し取りづらさもあって、本当にパワーが印象的でした」(張本)

 渡辺武弘監督はこう口にする。

「張本選手が予想外に0-3で負けたので、オリンピックはそう簡単にいかないなと実感しましたね」

 張本は第3試合のインターバルで、父の宇コーチとともに修正を図った。

「少し練習をしました。父と少し話して『今は技術より気持ちの面でしっかり調整することが大事だ』と思いました。第4試合へ臨む前に少し落ち着くことができました」

 第3試合は平野がストレートでユアン・ワンを下し、日本が再び2-1とリードを奪った。とはいえ第4試合で張本が崩れれば、試合は再びタイに戻る。そんな状況で張本に声をかけたのがいずれも24歳の先輩だった。

「コートに立ってから平野選手、早田選手が『思い切って』と声をかけてくださったおかげで、その一言で第4試合を乗り切ることができました」

 渡辺監督は張本を2つの「偶数試合」で起用したオーダーについてこう説明する。

「早田選手と平野選手は張本選手にしてみるとお姉さんですよね。ダブルスが1試合目なので、先輩2人がいい戦いをして、次の張本選手にいい流れを持っていくといい形になるのかなという狙いでした」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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