F1ドライバーもオリンピックに出たい! F1が五輪の正式種目になる可能性は?

柴田久仁夫

フェリペ・マッサの夢

母国モナコの聖火ランナーに選ばれたシャルル・ルクレールは、モータースポーツがオリンピックの正式種目になる日を夢見ている 【Photo by Arnold Jerocki/Getty Images】

 連日、熱戦が繰り広げられるオリンピック・パリ大会。F1ドライバーたちも、熱い視線を送っている。
 
 代表的なのが、聖火ランナーとして地元モナコを走ったシャルル・ルクレールだ。「母国で聖火を運べたのは、本当に特別な瞬間だった。もしオリンピックでモータースポーツが行われたら、モナコ代表としてぜひ参加したいね」。世界チャンピオンのフェルナンド・アロンソも、「オリンピックは特別な存在だ。もしレーシングドライバーが参加できたら、素晴らしいことだと思う」と語る。
 
 そんな思いを実際の行動に移しているのが、2000年代にフェラーリで活躍した元F1ドライバーのフェリペ・マッサだ。現役引退後、FIA(国際自動車連盟)のカート委員会の委員長を務めたマッサは、オリンピックへのモータースポーツ加入に向けて、精力的に活動してきた。
 
 その甲斐あって2018年には、アルゼンチンで行われたユースオリンピック大会で少年少女ペア6チームの電動カートによるレースが開催された。ただしこれはあくまでデモランイベントで、メダルの授与などはなかった。「2024年パリオリンピックで、電動カートレースを正式種目にする」というのがマッサの夢だったが、こちらも残念ながら実現されなかった。

F1はオリンピックにそぐわない?

モータースポーツがオリンピックに受け入れられないのは、道具(マシン)の性能が競技者(ドライバー)の腕以上に結果を左右するからか 【©Redbull】

 なぜモータースポーツは、オリンピックに受け入れられないのか。大きく二つの要因が考えられる。
 
 まず、一つ目は「モータースポーツは人力以外の動力を利用する」からだ。エンジンあるいは電気モーターを搭載した乗り物でレースを行う。そこが「人と人が競い合う」オリンピックにそぐわないという考えだ。ただしオリンピックでも、人力以外を利用する唯一の例外として馬術競技がある。これについては後述しよう。
 
 そして二つ目の理由が「イコールコンディションを作りにくい」点だ。オリンピック競技でもテニスや卓球、自転車、スケートボード、ゴルフなど、道具を使う競技は山ほどある。いや、シューズやウェア、水着の質や形状がパフォーマンスに影響すると考えれば、全てのオリンピック種目が道具を使う競技と言っていいだろう。
 
 とはいえモータースポーツに比べれば、道具の優劣が勝敗の決定的な要素になり得ない。対照的にF1は、たとえマックス・フェルスタッペンやルイス・ハミルトンでも、今季最下位のザウバーマシンでレースをしたら、10位に入ることも難しい。「究極のハンディキャップスポーツ」といわれる所以である。
 
 F1ドライバーたちもそこは十分承知していて、「オリンピックの舞台に、僕らは向いてない。クルマによって結果が大きく変わってしまうからね」(フェルスタッペン)、「母国の代表になるのは魅力的だけど、100%同じコンディションでのレースは不可能だ」(オスカー・ピアストリ)と、否定的な意見が少なくなかった。

1/2ページ

著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント