「Youにとって有名な日本のアスリートは?」 パリ五輪に集った世界の記者らに聞く

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 パリ五輪もすでに後半戦へと突入した。フランスの首都パリは、世界中から集まったアスリートと観客で賑わい、街全体が一大スポーツフェスティバルの舞台となっている。エッフェル塔やヴェルサイユ宮殿など、パリの象徴的な場所が競技会場として使用され、歴史と現代が融合する特別な雰囲気が漂っている。

 パリ五輪は、フランスが1924年以来100年ぶりに開催するオリンピックであり、その準備には多大な努力と資金が投入された。環境に配慮した大会運営や、都市の持続可能な発展を目指す取り組みが評価され、世界中から注目を集めている。そんな中、私は現地に滞在し、世界各地から集まった記者らに「あなたにとって有名な日本のアスリートは誰か?」という質問を投げ掛けた。彼らの目に映る日本とはどのようなものか。

イギリス人記者が挙げた偉大な柔道家

Barker記者が挙げたのは、日本が世界に誇る偉大な柔道家だ 【スポーツナビ】

 トライアスロン会場で出会ったのはイギリス人記者、Barkerさん。彼は同国に本社を置くメディアカンパニーで働いている。「あなたにとって最も有名な日本のアスリートは?」。そう質問すると、意外にも元柔道家の名前を挙げた。

「私がまず思い出す日本のアスリートはYasuhiro Yamashitaだ! 彼は1984年のロサンゼルス五輪で金メダルを取っただろ。本当に強い柔道家だったので印象に残っているよ」

 そう、現在は全日本柔道連盟の名誉会長や日本オリンピック委員会の会長を務めている山下泰裕さんのことだ。山下さんはロス五輪で右ふくらはぎを肉離れする怪我を負いながらも勝ち進み、決勝戦では負傷にも屈せず見事優勝を成し遂げた。その屈強な精神と逆境を跳ね返す力に感銘を受けたのだろう。

 さらに、Barkerさんは日本が世界に誇るテニス選手の名も挙げた。

「あとはKei Nishikoriを知ってるよ! 全米オープンで(アンディ・)マリーに勝っただろ。あれは衝撃的だったよ」

 錦織圭は2016年の全米OP男子シングルス準々決勝でマリーにフルセットの末、劇的な勝利を収めた。これが彼の記憶に強く残っているようだ。

 またBarkerさんは、日本のスポーツの歴史についても語ってくれた。

「日本も(五輪では)柔道で勝てば満足していた時代から、陸上競技や水泳など他のスポーツでも勝つことを目指すようになったよね。日本のラグビーがワールドカップ(W杯)でどれほど強くなったかを見れば、各国がどのように発展しているかがわかる。40年、50年前の日本の選手たちは小柄だったけど、今では大きな選手もいるね。五輪やW杯に向けて各国がより高度なトレーニングや食事管理を行うようになり、スポーツのレベルが向上していると思うんだ」

 イギリス人記者であるBarkerさんの目に、日本のスポーツの歴史がどのように映っていたのか。それを聞くことができて新鮮だったし、スポーツが盛んなイギリスの中にも、日本の存在がしっかりと刻まれているのだと知り、日本人として誇らしく、そして嬉しく感じた。

日本サッカーのレジェンドを愛するスポーツコメンテーター

Hogbenさんが口にしたのは日本サッカー界のレジェンドであるあの選手 【スポーツナビ】

 バドミントン会場では、イギリス人スポーツコメンテーターのOlly Hogbenさんに出会った。年齢は42歳で、五輪の放送局に勤務。Hogbenさんは世界中を飛び回っており、今年2月には国立競技場で開催されたサッカーのアジアチャンピオンズリーグのコメンテーターを務めたほか、毎年2回くらい来日しているとのことだ。また、体操の内村航平さんが引退した頃に、それについて日本のニュース番組にビデオ出演してコメントも出している。

 そんなHogbenさんにも聞いてみた。「あなたにとって最も有名な日本人アスリートは?」。すると日本サッカー界のレジェンドの名前が挙がった。

「僕にとって日本のアスリートと言えばKazuyoshi Miuraだよ! 子供の頃に好きだったチャンピオンシップマネージャーというゲームがあってね、それでKazuを知ってお気に入りになったんだ」

 チャンピオンシップマネージャーとは1990年代にリリースされたPCゲームで、自身がサッカーチームのマネージャーとなってチームを強化していく内容だ。三浦知良のことが大好きなHogbenさんは、なんと仕事で同選手と関わる機会があったようだ。

「何年か前にJリーグの試合でコメンテーターをしたんだ。その試合はKazuが当時所属していた横浜FC戦でね。ただ、Kazuがその試合ベンチスタートだったので『試合に出てくれ!』と願っていたら本当に途中出場してくれたんだ! 最後の5分くらいだったけど、とても特別な体験だったよ。小さな頃にPCゲームで知っていた憧れの選手が目の前でプレーしていたので、頭の中はもう子供の頃に戻った気分!」

 Hogbenさんは、目をキラキラさせながら嬉しそうに語ってくれた。

ドイツ人の元記者が即答した選手は……

ドイツ人の元記者(左)の方が即答したのは、サッカーのブンデスリーガで活躍する選手だった 【スポーツナビ】

 サッカーの日本女子代表(なでしこジャパン)がブラジルと戦った会場で出会ったドイツ人の元記者にも話を聞いた。彼は元々イギリスにある世界的なニュースメディアで記者をしていて、現在は五輪に関わる仕事をしているため、パリに数日間滞在しているそうだ。

「あなたの国で最も有名な日本のアスリートは?」と聞いてみると、彼は「Ito!」と即答した。どのItoかと尋ねると「Hiroki Ito」とのことだった。今夏にサッカーのブンデスリーガで最多優勝を誇るバイエルン・ミュンヘンに移籍した伊藤洋輝だ。つい先日、「伊藤が骨折した」という発表がチームからもあったが、ドイツ人にとっても驚きとショッキングなニュースとして、広く報じられていることが窺えた。

 さらに大迫勇也の名前も挙がった。大迫は現在J1のヴィッセル神戸に所属しているが、かつて1.FCケルンやブレーメンなどブンデスリーガで長らく活躍していた。

 また「あなたの国で人気のあるスポーツは?」と聞くと、彼いわく「バスケットボールがNo.1だ」とのことだ。パリ五輪に出場したバスケ男子日本代表が1次リーグ初戦で対戦したのがドイツだったが、W杯王者でもある相手に完敗を喫した。「決勝でUSAと対戦してドイツが優勝する!!」とも意気込んでいた。彼の希望は叶うだろうか。

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スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

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