渡辺一平「水泳って難しい」の真意を探る “五輪の魔物”について星奈津美が見解
鈴木聡美の12年ぶり五輪の決勝は冷静さが鍵に
女子200メートル平泳ぎで12年ぶり五輪の決勝への進出を決めた鈴木聡美。日本競泳史上最年長となる33歳は決勝でどんな泳ぎを見せるのか 【写真は共同】
決勝ではとにかく落ち着いて泳いでほしいですね。準決勝で上位だったケイト・ダグラス選手(米国)とタチアナ・スミス選手(南アフリカ)はずば抜けた成績でしたし、他にもハイペースな選手が多くいます。鈴木選手もテンポは早い方ですが、200メートルでは最初の100メートルにスーッと伸びるように泳ぐ時間帯が増えるので、他の選手に惑わされずに力むことなく泳げれば、終盤で追い上げられるチャンスは十分にあるはずです。
泳いでいると隣の選手はどうしても視界に入ってしまいますし、「予定より遅れているな」などと感じると焦りにつながります。もちろん事前にライバルの傾向をつかんでおく必要もありますが、想定と違ってもいかに落ち着けるかが決勝の鍵を握ります。
出場した選手だけが対峙する”五輪の魔物”
女子200メートルバタフライで惜しくも決勝進出を逃した牧野(右)と三井。同種目を専門とする星さんが2人の悔しさを代弁した 【写真は共同】
本多選手は東京五輪では初出場だったので、怖いもの知らずの一面もありましたが、今回はメダリストとしての出場です。私も経験がありますが、一度メダルを獲ると「国際大会では毎回メダルを獲らなければ」というプレッシャーを感じることがあります。それでも東京五輪以降は、日本の競泳メンバーの中で一番安定した泳ぎをしていたので、本多選手の予選敗退にあらためて「オリンピックには“魔物”がいるな」と感じました。
現役時代に私がもっとも得意としていた女子200メートルバタフライでは、三井愛梨選手(横浜サクラ)と牧野紘子選手(あいおいニッセイ同和損保)が出場しましたが、準決勝敗退でした。2人の実力を考えたら決勝進出を狙えたタイムだったのが悔しいところです。ただ、私も出場していた種目に2人も代表が入ってくれたのはすごく嬉しかっただけに、選手と同じように悔しさを覚えました。決勝の舞台で戦うなど、より上位を目指すにはもう少し予選や準決勝で余力を残して戦えるようになることが重要です。彼女たちならそのレベルに行けると信じていますので、今後に期待しています。
星奈津美(ほし・なつみ)
【株式会社RIGHTS.】