渡辺一平「水泳って難しい」の真意を探る “五輪の魔物”について星奈津美が見解
男子200メートル平泳ぎ決勝で健闘するも日本勢は渡辺(左)が6位、花車が5位に終わった 【写真は共同】
同日に行われた女子200メートル平泳ぎ準決勝では、ロンドン、リオに続いて3度目の五輪出場となる鈴木聡美(ミキハウス)が全体8位で決勝に進出。鈴木はロンドン五輪で銀メダルに輝いており、12年ぶりの五輪のメダル獲得を目指す。
日本勢はメダル獲得や決勝進出にまったく手が届かないレベルではなかっただけに、より悔しさが残った5日目。北京大会から3大会連続で五輪出場を果たし、ロンドン、リオの女子バタフライ200メートルで2大会での銅メダルを獲得した星奈津美さんに、五輪で勝つことの難しさを語ってもらった。
新怪物・マルシャンの“支配”の影響を受けた日本勢
レース展開も、会場の雰囲気もすべてを“支配”したマルシャン(中央)。五輪レコードの圧巻の泳ぎだった 【写真は共同】
バタフライを専門にしていた私からすると、対極にあるような平泳ぎとの両立が不思議でなりません。個人メドレーを得意としていることから4泳法が得意なのは間違いないのですが、複数の種目において頂点に立てるレベルで泳ぎを極めているのは、まさに異次元です。
一方、花車選手も渡辺選手もベストに近い泳ぎができればメダル獲得が狙えた結果だったので、より悔しさが増しますよね。レース後に渡辺選手が「水泳って難しい」とコメントを残していましたが、平泳ぎはちょっとしたキックや手をかくタイミングのずれで狂いが生じやすい種目です。身体の疲労度や仕上がりだけでなく、ミリ単位のずれで成績が大きく変わるので、そうした平泳ぎの繊細さに難しさを感じたのかもしれません。
6月にナショナルトレーニングセンターで練習中の渡辺選手に会った時は調子が良かったですし、ヨーロッパ遠征に行っていた時も2分06秒台をコンスタントに出していました。今後は、調子が良かった時の泳ぎとパリ五輪での泳ぎの違いをしっかりと分析することが重要になります。
花車選手は初出場で決勝の舞台に立ち、5位の結果を残せたことに自信を持ってほしいです。特に今回は、地元のマルシャン選手へ地鳴りのような応援が響き渡る異常な環境でした。観客の応援はマルシャン選手が息継ぎで顔を上げた瞬間に合わせていたので、その応援でリズムが狂ってしまったのではと心配になりましたね。普段であれば気にならないのですが、あれほどの応援となると少なからず影響はあったと思います。マルシャンがレースも会場の雰囲気もすべてを“支配”していました。そんな難しい状況下でも花車選手が5位になれたのは、前向きに捉えるべき結果です。