陸上「男子100m」人類最速の栄冠は誰に!? 金メダル候補擁する新競技「ブレイキン」にも注目【パリ五輪・後半どうなる?】

柴山高宏(スリーライト)

【画像制作:スリーライト】

 五輪の花形競技「陸上」。なかでも屈指の人気を誇る男子100mは、「誰よりも速く走りたい」と願うアスリートが限界に挑み続けてきた歴史の積み重ねであり、いつの時代もファンを熱狂の渦に巻き込んできた。

 今大会の最右翼は、昨年、ブタペストで行われた世界選手権で9秒83の自己ベストをマークして金メダルを獲得した、米国のノア・ライルズだ。ユニークな性格の持ち主で、レース後に『ドラゴンボール』のかめはめ波のポーズを披露したり、『遊☆戯☆王』のカードを競技場内に持ち込むなどのパフォーマンスを行うことでも知られるが、その実力は本物。ウサイン・ボルトが2009年のベルリン世界選手権でマークした世界記録9秒58を超えることができるか。

ノア・ライルズ 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 日本勢は2022年、23年の世界選手権で2大会連続入賞(22年は7位、23年は6位)を果たし、日本歴代2位のタイム(9秒97)を持つサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)。今年6月の日本選手権を制した坂井隆一郎(大阪ガス)、同2位の東田旺洋(関彰商事)が出場する。1932年のロス五輪で6位入賞を果たした伝説のスプリンター・吉岡隆徳さん以来となる決勝進出と、上位入賞に期待したい。

 男子4×100mリレーには、上記の3選手に加え栁田大輝(東洋大)、桐生祥秀(日本生命)、鵜澤飛羽(筑波大)、上山紘輝(住友電工)、飯塚翔太(ミズノ)が選出。東京五輪では、決勝での痛恨のバトンミスで途中棄権となった「リレー侍」。雪辱を果たし、2大会ぶりのメダルを獲得できるか。

 中・長距離種目は女子1500mと5000mに出場する田中希実(ニューバランス)と、男子3000m障害に出場する三浦龍司(SUBARU)に注目したい。

 田中は前大会1500m準決勝で3分59秒19の日本記録をマークすると、決勝では8位入賞を果たした。この種目での入賞は、日本選手初の快挙だ。2023年にはダイヤモンドリーグで5000mの日本記録を更新(14分29秒18)。今年6月の日本選手権では1500m、5000mの両種目で圧勝するなど、もはや国内では敵なしの状態だ。

 箱根駅伝のファンにもおなじみの三浦は、順天堂大学在学時に東京五輪3000m障害に出場。予選で日本記録(8分09秒92)をマークし、決勝では7位入賞を果たした。この種目での入賞も前述の田中同様、日本選手初の快挙であり、三浦の活躍が他の種目の影に隠れがちだった3000m障害の知名度を一気に押し上げたと言っても過言ではないだろう。

 三浦は2023年には自身がマークした日本記録を更新(8分09秒91)。今年7月17日には、東京五輪でも本番前の最終レースとして選んだ、縁起の良いホクレン・ディスタンスチャレンジ深川大会5000mで、13分31秒61の好走を見せた。2度目の五輪となる三浦と田中には、前大会以上の結果に期待したい。

快進撃が続く北口榛花

北口榛花 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 東京五輪では女子やり投げで57年ぶりに決勝に進出するも、予選終了後に生じた左わき腹痛の影響で最下位に終わった北口榛花(JAL)は、捲土重来の舞台で金メダルを射程圏内にとらえる。2022年にはダイヤモンドリーグで初優勝。同年の世界選手権で銅メダル、翌年には金メダルを獲得するなど、快進撃が続く。パリ五輪の表彰台でも、トレードマークの笑顔が弾けるか。

 男子110mハードルの泉谷駿介(住友電工)は、23年6月の日本選手権で自身の持つ日本記録を更新(13秒04)すると、同月末に行われたダイヤモンドリーグで優勝。同年8月の世界選手権では、日本勢初となる決勝に進出し、5位入賞の快挙を成し遂げた。その泉谷の順天堂大学時代の後輩にあたる村竹ラシッド(JAL)は、同年9月の日本インカレで13秒04をマーク。2人の若きハードラーの活躍に期待したい。

 東京五輪で銀メダルを獲得した男子20km競歩の池田向希(旭化成)は、2度目の五輪で金メダルの獲得をめざす。池田は今年2月の日本選手権で、1時間16分51秒の自己ベストをマーク。2015年に鈴木雄介(富士通)が樹立した世界記録(1時間16分36秒)まで、15秒と迫った。

 男女2選手がペアになり、42.195kmを交互に2度歩く新種目・競歩混合リレーには、東京五輪男子50km競歩で6位入賞を果たした川野将虎(旭化成)、3大会連続での五輪出場となる岡田久美子(富士通)ら4選手が出場。こちらも期待したい。

 マラソンはし烈な選考レースを勝ち抜いた6人が出走。男子は、昨年10月に行われたMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)を制した小山直城(Honda)、2位通過でスピードに定評がある赤﨑暁(九電工)、東京五輪で6位入賞を果たしたベテランの大迫傑(Nike)と、バランスの良い布陣になっている。

 女子はMGCトップ通過で五輪初出場となる鈴木優花(第一生命グループ)、東京五輪8位入賞の一山麻緒(資生堂)、今年1月の大阪国際女子マラソンで2時間18分59秒の日本記録を樹立した前田穂南(天満屋)が走る。

 ベルサイユ宮殿やエッフェル塔などの有名な観光名所を通るコースは、過酷なアップダウンが続くことから、五輪史上最難関と言われる。日本勢は、この美しくも過酷なコースを攻略して、上位入賞を果たすことができるか。

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