【週刊ドラフト候補レポート#14】世代屈指のスケール!山口廉王(仙台育英)、近畿では今朝丸に次ぐ右腕・村上泰斗(神戸弘陵)
「春から大きくレベルアップ!近畿では今朝丸に次ぐ右腕」
強烈なアピールに成功し、上位指名の期待がかかる村上 【写真提供:西尾典文】
【将来像】山本由伸(ドジャース)
フォームの雰囲気やボールの軌道などが高校時代の山本と重なる
【指名オススメ球団】ソフトバンク
将来の右の有力な先発候補が少ないチーム事情から
【現時点のドラフト評価】★★★☆☆
上位指名の可能性あり
今年の高校生ナンバーワン投手として呼び声高いのが以前のレポートでも紹介した報徳学園の今朝丸裕喜だが、同じ兵庫県でもう1人プロのスカウト陣から高い注目を集めているのが神戸弘陵の村上だ。中学時代はキャッチャーで、本格的にピッチャーとなったのは高校入学後だが、昨年夏前には150キロを超えるスピードをマークして早くも話題となっていた投手である。ただ、スピード以外の部分は課題が多く、昨年秋の明石商との試合を見に行ったときは最後まで登板することはなかった。後でスカウトに聞いた話では、故障や不調などではなく、機動力や小技などを使った攻撃を得意とする明石商相手には不安が大きかったからではないかと話していた。
初めてピッチングを見られたのは今年3月2日に行われた報徳学園との練習試合だ。この試合で村上は今朝丸の147キロを上回る149キロをマークしている。ただボールの勢いはあったもののばらつきも大きく、3回を投げて被安打3、4四死球、4失点で負け投手となっている。同じ3回を投げて無失点、5奪三振とほぼ完璧な内容だった今朝丸とは完成度の差が大きいように感じられた。
ただこの試合は練習試合解禁となった最初の試合であり、その後の県大会では公式戦初完封勝利を飾るなど確実に成長。そして再びその投球を見ることができたのが6月25日に行われた生光学園との練習試合だった。相手の生光学園のエース、川勝空人も最速153キロを誇る四国屈指の好投手ということもあって、この日の球場には確認できた限りで10球団、37人のスカウトが集結。この数字からも村上に対する注目度の高さがよく分かるだろう。そしてそんな大量のスカウトの前で村上は圧巻の投球を見せる。
1回に三者連続三振を奪うと、ストレートは最速150キロをマーク。その後もボールの勢い、コントロール、変化球全てが素晴らしく、3回まで1人の走者も許さないパーフェクトピッチングで、打者9人から8個の三振を奪って見せたのだ。4回にヒットと死球、四球でツーアウト満塁とされたものの、このピンチも三振で切り抜けると、続く5回も三者凡退で抑え、最終的に5イニングを投げて被安打1、11奪三振で無失点とほぼ完璧な内容で試合を作って見せたのだ。
まず3月と比べて成長を感じさせたのがコントロールだ。立ち上がりからストライク先行でどんどん追い込み、常に有利なカウントを作って勝負することができていた。4回にいきなりボールが続く悪い癖が顔をのぞかせたものの、そこでもしっかり落ち着いて無失点で切り抜けたところも見事だった。ストレートの最速は3月が149キロで、この日が150キロと大きく変わっていないように感じるかもしれないが、アベレージのスピードは明らかにアップしており、145キロを下回るボールは非常に少なかった。
また変化球も110キロ前後のカーブと120キロ台中盤のスライダーでカウントをとり、130キロ台のカットボール、フォークを決め球として使い、さらにチェンジアップも操るなど非常に多彩である。多くの球種を投げられれば良いというものでもないが、どのボールも高校生としては十分な質の高さも感じられた。また牽制やクイックなども春先と比べて確実にレベルアップしており、このあたりも成長した部分と言える。
この日は視察に訪れた10球団のうち9球団はスカウト部長クラスが顔を見せていたが、その前で強烈なアピールとなったことは間違いない。夏の兵庫大会でもこの日のような投球を続けることができれば、上位指名の可能性も見えてくるだろう。