パリ五輪前最後の“コクリツ”で熱狂を生み出せるか FC東京をけん引する4人の五輪世代

後藤勝

FC東京をチャレンジの場とした若手有望株も

AFC U23アジアカップで猛威をふるった松木(左)・荒木(右)のコンビ 【©FC TOKYO】

 青森山田高等学校3年時に出場した全国高校サッカー選手権大会で日本一に貢献。2022年のナンバーワンルーキーとして人々の耳目を集めるなかで、松木は自らを成長させるためにFC東京を進路に選択した。プロ1年目から先発で中盤のポジションを奪うと、以後、ほとんどスタメンの座を譲ることなくリーグ戦への出場を継続することで成長してきた。当初は切り替えのすばやさが強調され、守備的な選手という印象だったが、近頃はFC東京でもU-23日本代表と同じトップ下でプレーするようになり、荒木と前線で組むコンビが機能。パリ五輪出場権獲得をかけたAFC U23アジアカップでも「松木荒木」のコンビが猛威をふるった。今年4月30日に21歳の誕生日を迎えた現在はオールコートをカバーする万能の選手という理想像に近づきつつある。

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FC東京への期限付き移籍で開花した荒木遼太郎 【©FC TOKYO】

 東福岡高校を経て2020シーズンに鹿島アントラーズへと加入、プロデビューを果たした荒木。しかし3年目の2022シーズン以降は出場機会が減少し、2022年のドバイカップU-23に出場したあとはパリ五輪をめざす世代の代表から遠ざかっていたこともあって、1月29日に22歳の誕生日を迎えた今年、FC東京への期限付き移籍を決断した。2021シーズンはベストヤングプレーヤー賞に輝いたほどの選手だけに、もともと才能に疑いの余地はなかったが、東京のスタイルにすぐフィットして開花が促進。J1開幕からの6試合で4ゴールというハイペースで得点を重ね、堂々のU-23日本代表入りを果たした。特筆するべきは本人も「神経を使っている」というシュートの正確さ。クラブでも代表でも得点感覚あふれる名手の地位を築いている。

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“コクリツ”で最高のエンターテインメントを

「7・13」の新潟戦で、FC東京の国立無敗神話は継続されるのか 【(C)J.LEAGUE】

 4月3日に国立競技場でおこなわれたJ1第6節浦和レッズ戦は、まさに五輪世代の活躍がチームを勝利に導くビッグマッチだった。先発平均年齢22.73歳という若きFC東京は前半も先制を許したが走り勝ってペースを譲らず、後半5分には左サイドからバングーナガンデがマイナス方向に戻したグラウンダーのパスを荒木が左隅にシュート。バングーナガンデのアシストと荒木のゴールという得点で1-1の同点に追いついた。さらにその8分後、後半13分には松木が魅せた。右から大きな浮き球でサイドチェンジ。このボールを受けた19歳(現在は20歳)の俵積田晃太がやはり大きな浮き球で折り返すと、中に入ってきた松木が観る者の度肝を抜く芸術的なボレーシュートをネットに突き刺し、スタンドを興奮の渦に巻き込んだ。

 この試合で今シーズン初先発を果たしたのが野澤だった。第5節川崎フロンターレ戦では先発していた波多野豪が一発退場となり、後半30分からスクランブル出場。3失点負けの苦杯を舐めたが、そこから中3日で準備して臨んだこの浦和戦ではチアゴ・サンタナのゴラッソのみの1失点にとどめ、続く同じ国立での第7節鹿島アントラーズ戦ではクリーンシート。見事なセーブを連発して崩れかけたチームを立て直し、試合が終わるや否や、足早にAFC U23アジアカップがおこなわれるカタールへと旅立っていった。

 この国立の高揚を、野澤は次のように語った。

「国立ではどんなゴールも記憶に残りやすい。やっぱり盛り上がりますし、楽しいなっていうのが一番ですね。勢いを持って攻撃している時はみんなワクワクしていて、そういうところが一番楽しいと思います。あの時、ぼくは初スタメン。国立の試合にかける想いがありましたし、勝利につなげられて本当に良かったと思っています」

 ひたむきに走り、ボールを追いかけた、あの国立での感動が「7・13」にも再現されないとも限らない。野澤は広くサッカーファンに向け、こう呼びかける。

「もし来ていただけたなら、絶対に楽しませます。国立で、全力で最高のエンターテインメントを披露したいと思っています」

 勝利に迫ることでFC東京のファン・サポーターを喜ばせたいという想いももちろんある。だがそこに加えて、勝敗を超越した次元で、最高の興奮を届けたいという想いもあるのだ。

「ゴールに迫る攻防があれば一番楽しいかなと思うんです。0-0のような得点が入らない試合になったとしても、何度でもゴールに迫り続けるような展開であれば、観ていて損はしないし、ワクワクするんじゃないかな、と。あっという間の90分間を披露したいなと思っています。皆さん攻撃が楽しいと思うんですけど、守備でもぼくらが身体を張って、魂込めて守備しているところを観ていただけたら、どんどんギアが上がってくるんじゃないかなと思います」

 2024年7月13日19時、“コクリツ”という魔力のかかった劇場で、若き青赤戦士たちが人々を最高の熱狂に引きずり込む。

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著者プロフィール

サッカーを中心に取材執筆を継続するフリーライター。FC東京を対象とするWebマガジン「青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジン」 (http://www.targma.jp/wasshoi/)を随時更新。「サッカー入門ちゃんねる」(https://m.youtube.com/channel/UCU_vvltc9pqyllPDXtITL6w)を開設 。著書に小説『エンダーズ・デッドリードライヴ 東京蹴球旅団2029』(カンゼン刊 http://www.kanzen.jp/book/b181705.html)がある。【Twitter】@TokyoWasshoi

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