山本由伸、ベッツら故障者続出 歴史的逆転劇を見せたドジャースは「試練のとき」をしのげるか
6月18日のロッキーズ戦、九回に逆転3ランを放ったテオスカー・ヘルナンデスを迎える、大谷(左)とフリーマン 【写真は共同】
九回2死一、二塁。ロッキーズがまだ1点をリードしていた。その場面でヘルナンデスは、1-2からの4球目――高め真っ直ぐのボール球を振ったかのように見えたが、一塁塁審が腕を横に広げた。直後に、ヘルナンデスが逆転3ランを放った。
主審が判定を塁審に委ねたとき、ドジャースのクレイトン・マッカロー一塁コーチは、チラッと横目で真横を見た。
「難しい判定だと思った。(自分では)判断がつかなかった」
セーフの判定に安堵した。
「あれは、審判次第。審判によって、チェックポイントがある。重要な場面。バットが止まったと判断できるだけの、確証があったんだと思う」
一塁走者だったフレディ・フリーマンにも判断できなかった。試合後、着替えを終えた彼は、近くにいたメディアに問いかけた。
「あれ、(バットは)止まってたか?」
リプレイ映像を見る限り、決してバットのヘッドは返っていない――そう伝えられるとフリーマンは、「あぁ、終わってしまったか、と思ったよ」と苦笑いを浮かべた。
その頃、クラブハウスの奥では、ヘルナンデスがチームスタッフと一緒にスマホの画面に見入っていた。
「(判定が)どっちに転んでもおかしくなかった。でも、いまビデオを見て、振っていないと確認できたよ」
逆に言えば、彼もあの瞬間は、確信がなかったよう。
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負けを覚悟した「過去一番」のスーパープレー
六回、20号本塁打を放った大谷 【写真は共同】
そんな歴史的な逆転劇は、ウォーカー・ビューラーの乱調(翌日、負傷者リスト入り)で幕を開け、ドジャースは五回を終え、2対7と5点をリードされていた。
六回、先頭の大谷がセンターへ476フィートの特大弾を放った。その飛距離は今季リーグ最長で、当然、今季自己最長だったが、ソロ本塁打でもあり、その時点ではなんら試合の行方に影響を及ぼすほどのものではなかった。
しかし、七回の4打席目は本来、試合の勝敗を左右するようなインパクトを持った。
1点を返したが、なおもドジャースは4対8で4点のビハインド。2死一、二塁で打席に入った大谷が、再び快音を轟かせたとき、デイブ・ロバーツ監督は腰を浮かせた。「抜ければさらに2点が入り、流れもこっちに来る」
ところが、その試合で4安打を放ったブレントン・ドイル(ロッキーズ)が、右中間に背走しながら飛んだ。次の瞬間、彼のグラブにすっと白球が吸い込まれている。捕球確率15%のスーパーファインプレーだった。
「捕れるかどうか、グラブに収まるまで、分からなかった」とドイル。「いい一歩目が切れた。ジャンプした瞬間、まだ、チャンスがあるかどうか分からなかった。でも、手応えがあった。グラブに入ったと思った」
昨年のゴールドグラブ賞を受賞したドイルは、「過去一番のプレー」と胸を張り、この時点で勝ちを疑わなかった。一方でロバーツ監督は、「自分もセンターを守っていたから、あの打球をとることの難しさが分かる。あれはもう、相手が凄い」と脱帽し、同時に、負けを覚悟した。
その裏、さらに1点を追加され4対9。八回のドジャースの攻撃が3人で終わると、さすがに敗戦ムードが漂った。データサイト「コディファイ・ベースボール」によれば、八回を終えた時点で、5点以上負けているビジターチームは、327連敗中だった。
5番から始まった九回。2つの四球とヒットで1死満塁となったが、さすがに5点差は満塁本塁打でも出ない限り、厳しい。そこでロバーツ監督は、その日三塁打を打っていた9番のクリス・テーラーに代えて、ジェーソン・ヘイワードを代打に起用した。もちろん、本塁打を期待したわけではない。
「とにかく、翔平に打順を回したかった。ヘイワードなら、繋いでくれると思った」
調子を上げてきた大谷に回れば、長打が期待できる。併殺だけは避けてくれ。そんな思いだった。
ところが、三振でもいい――と送り出されたヘイワードがなんと、右翼ポール直撃の満塁ホームランを放った。
九回、満塁ホームランを放ったヘイワード 【Photo by AAron Ontiveroz/The Denver Post】
ロバーツ監督は確信した。
続いて打席に入った大谷は、その流れを止めることなく左前安打を放つ。続くウィル・スミスは見逃し三振に倒れたが、フリーマンが打席に入ったところで、ワイルドピッチ。大谷が二塁へ進み、一塁が空いたことで、ロッキーズはフリーマンを敬遠した。そこでヘルナンデスが打席に入り、逆転3ランを打ったわけだが、試合が終わったあとも、ヘルナンデスの打球を見送ったジェーク・ケーブの怒りは収まらず、引き上げてきた一塁塁審に詰め寄るほどだった。
逆なら、ヘルナンデスが詰め寄っていたかもしれない。
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