週刊MLBレポート2024(毎週金曜日更新)

エンゼルス時代の大谷が被った「兜」はどこへ? “重要な終結”を迎えた水原被告の詐欺事件

丹羽政善

ベンチで祝福されるエンゼルス時代の大谷 【写真は共同】

 昨季、エンゼルスではホームランを打った選手に兜を被せるのが、ひとつの儀式だった。レプリカはまだ球場内に展示してあるようだが、今年からチーム名にちなんでか、電飾された天使の輪をヘルメットに被せるようになった。

 被り物によるセレブレーションが始まったのは2年前。そのときはカウボーイハットで、ホームランを打つごとに一枚ずつシールが貼られていった。カウボーイハットはエンゼルスの初代球団オーナーである故ジーン・オートリーにあやかったもの。オートリーは元々、歌手であり、映画俳優。「歌うカウボーイ」というニックネームで知られた。

 昨年はオークランドで開幕。当初は、NBAウォリアーズの麦わら帽で代用し、ウォリアーズのロゴをエンゼルスのステッカーで隠した。兜が登場したのは、アナハイムに戻ったタイミングである。

 では、大谷翔平(ドジャース)らの汗がにじみ、試合中はまるで家宝のようにダグアウト中央に鎮座していたあの兜はいま、どこにあるのか。

 先週末、エンゼルスがシアトルに来ていたので、選手らに聞いて回ったものの、誰1人として行方を知らなかった。

「自分は7月の終わり、顔面に死球を受けてから離脱してしまったので、そもそも最後にどうなったかも分からない」と話したのはテイラー・ウォード。クローザーのカルロス・エステベスも「そういえばどこへ行ったんだろう?」と首をひねった。

 大谷が持ち帰ったとも考えられるが、彼は昨年9月に右肘を手術。シーズン最終日、右腕はギプスで固定されており、なぜかゴルフのパターを左手に持ち、クラブハウスをあとにした。

 一連の発案者は、チームのまとめ役を担うティム・バスというコーチだ。元々、カブスでコンディショニング・コーチを長く務めていたが、仮装して指導をしたり、練習場にフェラーリで乗りつけるなど道化を演じ、選手を和ませながらチームワークを形成していくのが彼の手法で、彼なら知っているのでは――ということで尋ねると、「知ってるよ」とあっさり答えた。

「球場内にある」

 ところが、「球場内のどこ?」と聞くと、「それは言えない」と急にあいまいに。苦笑しながら続けた。

「今度、写真を撮って見せる。それが証明になるはずだ」

 3階にあるオーナー専用のスイートルームか。あるいは、ネット裏にある半地下のスイートルームフロアか。

 なぜ言えないのか腑に落ちないが、大谷の元通訳・水原一平被告が持ち帰り、オークションにかけたのでは、という笑えないジョークさえ耳にしただけに、然るべきところに保管されているのだとしたら、それは移籍したとはいえ、手配に関わった大谷に対する敬意と言えるのかもしれない。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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