マジョルカの古参ライージョ&アブドンが語る 「久保建英」「日本サッカー」「エスパルス」

吉田治良

マジョルカ加入8年目の32歳ライージョ(右)と、同じく7年目の31歳アブドンがそろって来日。時差ボケが残る中でも丁寧にインタビューに答えてくれた 【YOJI-GEN】

 マジョルカの主力であるセンターバックでキャプテンのライージョと、ストライカーのアブドンが、クラブのメインスポンサー『株式会社タイカ』のプロモーション活動、およびJ2清水エスパルスとのパートナーシップ契約延長のために来日した。終了から間もない2023-24シーズンの戦いを振り返るとともに、かつての同僚、久保建英(現レアル・ソシエダ)との思い出や、エスパルスとの業務提携の意義などについても語ってくれた。

悲しかったけれど後悔は1つもない

決勝でアスレティックに敗れ、02-03シーズン以来となるコパ・デル・レイ制覇は叶わなかったが、ライージョ(右)は満足度の高いシーズンだったと振り返る 【Photo by DAX Images/NurPhoto via Getty Images】

──2023-24シーズンを振り返って、チームと個人に点数を付けるなら、10点満点で何点でしょう?

アントニオ・ライージョ(以下、ライージョ) チームは7.5~8点。1部残留という目標を達成できたし、コパ・デル・レイ(スペイン国王杯)では準優勝ですからね。自分もチームのために最後まで戦えましたから……そうですね、同じ点数をあげたいと思います。

アブドン・プラツ(以下、アブドン) チーム、個人ともに9点ですね。私自身、ラ・リーガ1部でキャリアハイの数字(34試合・6得点)を残せたシーズンでもあったので、謙虚な気持ちを持ちつつも、少し高めの9点を付けていいかなと(笑)。

──残念ながらコパ・デル・レイは、決勝でアスレティック・ビルバオに、延長PK戦の末に敗れてしまいましたね。

ライージョ あの敗戦は、とにかく悲しかった。ただ、やり残したことは1つもありませんし、決勝まで戦えたことは我々にとって大きな誇りです。

アブドン ライージョ(16-17シーズンから在籍)や私(17-18シーズンから在籍)のように、長くこのチームでやってきた選手にとっては、なおさら心が痛い瞬間でした。それは、3部に落ちたとき(16-17シーズンに降格)もめげずに応援してくれたファンにとっても、きっと同じだったでしょうね。

──ライージョ選手はその決勝戦でも先制点をアシストしましたが、昨シーズンは公式戦通算3得点・3アシストと、ゴールに絡むシーンも多かったですね

ライージョ そういった形でチームを助けられたのは、とてもうれしいことです。ただ、私はディフェンダーですからね。ゴールには運もありますし、まずは守備でしっかりと貢献することを考えています。

──アブドン選手は、これまでと何かプレースタイルを変えたんですか?

アブドン 何かを変えたというよりは、たぶん年齢を重ねて、以前よりも落ち着いてゴール前でプレーできるようになったんだと思います。そして、ゴールという結果が自信につながって、さらに次のゴールを呼び込むという良い循環が生まれましたね。

ヴィニシウスとは所属するグループが違う

マジョルカ時代のアブドンと久保。当時からフットボーラーとして稀有な才能を覗かせていたが、常に学ぶ姿勢を持つなど若くして人間性にも優れていたという 【Photo by Juan Manuel Serrano Arce/Getty Images】

──久保建英選手について聞かせてください。お二人は過去に2シーズン、一緒にプレーされましたが、彼にはどんな印象が残っていますか?

ライージョ タレントがあって、決定的な仕事ができる選手。意外性に富んだ、ちょっとありえないようなプレーもするので、見ていて楽しい選手だなっていう印象がありますね。

アブドン 人間的にも目上の選手やベテラン選手のことをリスペクトし、常に学ぶ姿勢があった。それはビッグプレーヤーになる上で欠かせない資質だと思います。日本人らしい礼儀正しさや謙虚さがありながら、それでいて社交的。ジョークも好きで、ロッカールームを盛り上げてくれる存在でもありましたね。

──最初にマジョルカに加入した当時(19-20シーズン)はまだ18歳でしたが、一度チームを離れ、再び戻ってきたとき(21-22シーズン)は印象が変わっていましたか?

アブドン 1年目はまだ少し波があったけれど、経験を積んで2年後に戻ってきたときは、よりフットボーラーとしての完成度が高まっていましたね。

ライージョ 成長するにつれて、どんどん判断力がアップしている。以前はひたすらドリブルを試みるようなところがありましたが、今は状況に応じた正しいプレー選択ができています。敵として対戦してみて、それはすごく感じますし、本当に痛いところを突いてくる。対峙するディフェンダーとしては、なるべくフィジカル勝負に持ち込むことを考えていますね。そこは彼の数少ない弱点でもありますから。

──ラ・リーガにはヴィニシウス・ジュニオール(レアル・マドリー)やニコ・ウィリアムス(アスレティック)といった優秀なドリブラーが多くいますが、久保選手はドリブラーランキングで言うと何番目くらいですか?

ライージョ 何番目かは分かりませんが(笑)、そもそもヴィニシウスやニコ・ウィリアムスとは、所属する“グループ”が違うんです。もっと中に切り込んでフィニッシュワークに絡んでいくタイプだから、たとえばビジャレアルの(アレックス・)バエナとか、マドリーのロドリゴ、ブライム・ディアスなんかが、タケの入るグループだと思いますね。

──日本の話は久保選手から聞いていましたか?

アブドン 日本に行くといいよって、ずっと言ってくれていましたね。実際に去年、2週間ほどプライベートで日本を訪れたんですが、タケの言っていた通り、本当に素晴らしい国でした。

──ライージョ選手は初来日?

ライージョ そうですね。ただ、日本に着いてすぐに分かったのは、人々がお互いをリスペクトしながら行動していること、そしてなにもかもが整理された国であるということ。ちょっとアバウトなところがある、我々ラテン系民族との違いを感じましたね(笑)。

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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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