大型FW、ロングスロー抜きで横浜FMに勝利 逆境を克服した町田の「正しい」努力
町田は短期間でチームを立て直し、6月15日の横浜FM戦を3‐1で勝利した 【(C)FCMZ】
試合後には黒田剛監督が相手チームの危険なプレーとマナー、審判のゲームコントロールを批判。それは結果以上に大きく取り上げられ、決して小さくはないオフピッチの反発を招いた。選手の目にはSNSなどから届く批判も目に入っていただろう。中2日という条件は相手も同じだが、メンタルも含めた切り替えが容易だったはずはない。
負の連鎖を乗り越えた今季初の逆転勝利
しかしどう考えても、悪条件が多すぎた。町田は上記の4人に加えて、韓国代表でエースストライカーのオ・セフンもコンディション調整のためベンチから外れていた。U-23代表の藤尾翔太と平河悠は先発したものの、アメリカ遠征から帰国した直後だった。
そんな中で迎えた15日の横浜F・マリノス戦で、町田は14分にいきなりの失点を喫してしまう。今季の町田は先制された試合に限ると「0勝4敗」で、逆転勝利が一度もない。分厚い暗雲がチームの上空には漂っていた。
町田はここから試合をひっくり返す。43分にコーナーキックから昌子源が同点ゴールを決めると、後半さらに2得点。アウェイで3−1の逆転勝利を飾った。
負傷者問題は「負の連鎖」を起こす誘引にもなっていた。仙頭啓矢が安井の負傷により天皇杯で想定外の長時間出場を余儀なくされ、横浜FM戦はベンチスタートとなった。一方で先発に繰り上がった下田北斗は1点目の起点となり、ダメ押しとなる3点目の直接FKを沈めた。
黒田監督はこう振り返る。
「本当は仙頭を(天皇杯で)あまり出すつもりがなかったのですが、出さざるを得なくて、中2日のコンディションを多少考慮したところもあります。またヘンリー(望月ヘンリー海輝)を使うことで、フリーキッカーの鈴木準弥がいなくなります。そこに(下田)北斗を入れて、また違うクオリティが出ました。キッカーが右利きから左利き(の下田)に変わると、準備が散漫になりやすいし、ターゲットを絞りにくくなる。それが良いほうに回ったのかなと思います」
SB望月が攻撃のキーマンに
望月はスピード、大きなストライドでロングボールを受けていた 【(C)FCMZ】
普段の町田は前線へのロングボールを多用するスタイルだ。横浜FM戦は194センチのオ・セフン、186センチのデュークを欠いたことで、前線の高さを活かせない状況だった。それでもサイドハーフを中心に、エリア両脇の「ポケット」を突くアタックに成功していた。
黒田監督はこう説明する。
「まず平河(悠)、そして(バスケス・)バイロン、藤本(一輝)のスピードでサイドバック(SB)の裏を突けます。SBの食いつきがかなり激しいことから、そこ(SBがサイドハーフに寄って空いたスペース)へのダイアゴナル(斜めの動き)をかなり狙えるぞという狙いで入りました。また真ん中にターゲットを置かなくても、ヘンリー(望月ヘンリー海輝)を張り上がらせることによって、起点は作れます。そのセカンドボールを回収することで、ポケットの攻略はできるだろうと考えていました」
町田は右サイドへの大きな展開を多用し、望月の高さや速さを活かしていた。指揮官は望月の活用についてこう述べる。
「ここ最近、調子を上げている選手のひとりです。過去のゲームを振り返っても、彼のところからかなりチャンスを作れています。サイドハーフが相手のSBにロックされるケースが多いので、その(SBがサイドハーフに付いて空いた)スペースを狙うことによって、一気に陣地を打開する練習をしていました。ゴール前のクオリティやスキルはもう一つ積み上げなければいけませんが、相手の脅威になっていたと思います」