「ここがゴールじゃなくて、ここからが始まり」 東京ドームから次代につなぐ――大橋秀行会長の思い

船橋真二郎

東京ドームの余韻、熱気を

 川嶋の背中を追いかけていた八重樫が2度目の挑戦を実らせ、ジム2人目の世界王者となるのは2011年10月。その後、井岡一翔(現・志成)、ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)と階級最強の相手と果敢に戦いながら、“激闘王”として名を馳せるとともに世界3階級を制することになる。

「で、今度は八重樫が川嶋のような存在になるんですよ。ロマゴンに立ち向かっていく姿なんかを井上や若い選手たちが見て、また井上が次の若い選手たちの大きな目標になる。それに原点の川嶋、八重樫、井上、みんな謙虚で、練習量もすごくて。そこもまた大事だよね」(大橋会長)

 まだ井上がスーパーフライ級で戦っている頃のコメントだが、今も現在進行形で引き継がれ、さらに大きくふくらんでいることが分かる。5月6日の東京ドームでは、八重樫トレーナーが元K-1王者の武居由樹をWBO世界バンタム級王者に導いた。大橋ジム出身の世界王者が世界王者を誕生させた初めてのケースでもあり、また違う形で自身の経験を後進に伝えている。

 大橋会長には、東京ドームの余韻、熱気を後楽園ホールひいてはボクシング界全体につなげていきたい、という強い思いがあるという。

 大橋プロモーションはNTTドコモの「Lemino」、フジテレビの「FOD」、各動画配信サービスや他のボクシングジムとも連携し、後楽園ホールを中心に毎月のように「フェニックスバトル」を開催。次代を担うボクサーたちに広く活躍の場を提供している。彼らが繰り広げる戦いにも目を向けてもらいたい。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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