「当たり前にサッカーをできる時間」に感謝 全国自衛隊サッカー大会が5年ぶりに開催

平野貴也

サッカーを通じ、部隊を超えたチームワークを形成

海自厚木マーカスの吉田のように、自衛隊には強豪校出身選手も少なくない 【平野貴也】

 自衛隊の駐屯地や基地には、サッカーだけでなく、様々な競技のチームが存在。スポーツを通じた活動は、体力強化に役立つだけでなく、部隊を超えたチームワークの醸成にも寄与しているという。

 4位となった航空自衛隊入間基地のDF城川修斗3曹は、奄美大島の大島高校サッカー部出身。自衛隊にサッカーをできる環境があると知って入隊。当初からこの大会を目標にしてきた。しかし、16年、宮崎県の航空自衛隊新田原基地チームで初出場の予定だったが、開幕前日に熊本地震が発生。大会中止と災害派遣の要請を受け、すぐに基地に戻り、被災地への物資配布に回った。以降、全国大会に縁がないまま、コロナ禍で大会が行われず、今回が悲願の初出場。

「入隊して10年目でようやく出られた。思いは、強かったです」と、社会人で日本一を目指せる貴重な機会を楽しんでいた。1月に10日間、石川県で給食支援活動に従事し、各部隊の助け合いの重要性も再認識。「サッカー部は、全員が同じ職場ではなく、別の部隊にいる。選手を送り出してくれている各部隊の仲間に感謝してやろうと言い合っている」と話した。

 大会は、自衛隊の幹部養成所としての機能を持つ防衛大学校のサッカー部OBが運営にあたっている。自衛隊の幹部が、下士官らのために働く特殊な構造であることも、この大会の特長だ。海自厚木マーカスのOBを主体とした海自厚木なかよし(今大会は、ベスト8)の監督を務める日里和樹2曹は「(中止の時期が続く中で)担当が代わっても、この大会の火を消さなかった先輩たちに感謝したい。サッカーを通じてチームワークの大切さ、素晴らしさを知ってほしい」と大会継続の価値を訴えた。

4年間の中止、大会を知らない世代への伝承

 4年間、大会が行われなかったため、この大会を経験していない若い隊員も増えていた。優勝した海自厚木マーカスのMF吉田誠3曹は、新潟県の帝京長岡高校、桐蔭横浜大学と全国区のチームでプレーしてきた実力者。大学サッカー部の先輩を通じ、自衛隊にサッカーをプレーできる環境があることを知って進路に選んだという。決勝戦では、先制点を含めて2得点の活躍で実力を発揮した。ただ「難しいゲームが多かった。正直な話をすると、自分が100%の力を出さなくても勝てる試合があると思っていた。でも、グループリーグで、全力でやらないと勝てないと感じた。異様な空気があった」と初めて参加した自衛隊大会特有の激しさに驚いていた。

 特に、優勝候補筆頭の海自厚木マーカスは、全チームから標的にされる難しさもある。自衛官は、年齢層が高くても、身体能力のベースが高い。役割を全うする意思も強く、駐屯地や基地、あるいは陸・海・空のプライドをかけた戦いで、必死になる。ほかの大会とは少し毛色の違う激しさがある大会だ。

 同チームで選手兼監督の大山は「全自(※大会の通称)を知らない若手がほとんど。この大会を、どう伝えるかを意識していた。日本一を経験できる機会は、なかなかない。マーカスでサッカーをやりたいと思って自衛隊に入ってくれる人を増やすのも、このチームの役割だと思っている。自衛隊には、全国大会があること、サッカーをやれる環境があることを知ってもらえれば良い」と次代への継承を強調した。災害がなく、自衛官が存分にサッカーを楽しみ、多くを学ぶ機会。今後は中止ではなく開催が続くことを願いたい。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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