混戦B1を象徴する川崎との激闘を制してCSに前進 渋谷・田中大貴が語る苦しいシーズンと「充実」
調子が上がらず苦しんだ田中
ルカHCと田中大貴にはA東京時代からの信頼関係がある 【(C)B.LEAGUE】
「チームに迷惑をかけていますけれど、これが去年1年間、試合をせずに休んでいた代償だと思います。自分にもっと力があって、それを早く取り戻して、もっといいパフォーマンスができればいいのですが……。また腰をケガしてしまって、そこからなかなか調子が上がらず苦しんでいます」
田中は1月31日の富山グラウジーズ戦で、第4クォーターの終了間際に腰を痛めた。「急性腰痛」の診断で、2カ月近く欠場している。ただそんな中でも地道な努力、取り組みは続けていた。
「一番良くないのは『やめてしまう』ことで、どんな状況だろうが、どんなパフォーマンスだろうが、自分はこの姿勢を貫いてやるだけかなと思います」
ルカHCはA東京時代に田中の強みを引き出し、チームを連覇に導いた指揮官だ。コーチも田中の復調、復活を粘り強く待ってきた。
「本来なら出られない状況になってもおかしくないと思いますけど、ある程度そういう状況も理解してくれて使い続けてくれました。頭を下げずにやることが大事だと言ってくれて、それですごく助かっているなという思いです。迷惑をかけるのは自分として心苦しいところですけど、それでも何とか力になりたい」
三河が連勝したら、SR渋谷は中地区2位に届かない。ワイルドカードも広島、千葉が揃って連勝をしたら「2枠」に入れない。とはいえ28日の勝利で、ともかく最後の2試合に向けて可能性は広げた。大まかに言えば28日の勝利で「数%」だった確率が「数十%」のレベルには上がっている。
諦めず戦った末に得た「充実」
5月4日、5日のホーム信州戦が渋谷の最終決戦となる 【(C)B.LEAGUE】
「自分たちの手でCSをつかみ取れたら、そこからまた違う戦いが待っています。今までも色々なことを経験してきていますし、その経験を(CSで)出せれば自分として納得できるシーズンになるのかなと思います。信州さんはこのリーグに残るか残らないかという瀬戸際で、次の試合にかける思いは強いはずです。まず気持ちの部分で、自分たちが上回らないと難しい試合になるので、その準備をする必要があります」
ホーキンソンはこう口にしていた。
「佐賀が三河に勝ち、渋谷にはまだ望みがあります。三河が三遠との戦いで1勝1敗、0勝2敗で終わってくれるとありがたいですけど、そこは私たちのコントロールできる部分ではない。何がコントロールできるかとなると、それは信州戦です」
田中は川崎戦後の記者会見で、今季の苦しみだけでなく「充実」も強調していた。
「自分も今までに経験したことないぐらい、すごく色々なことがある長いシーズンを戦っています。(シーズンの)スタートだけを見れば『CSはもう追いつかないかな』という状況でした。その中でもヘッドコーチが自分たちをプッシュして、自分たちも厳しい状況の中で諦めずに戦い続けた結果が、今この位置にいる大きな要因だと思います。周りの人たちが見るのとは少し違って、自分たちの中ではそこに対してすごく充実した感情を持っています。ただ、自分たちはまだ何かを成し遂げたわけではありません。今シーズンに関しては、どうしてもCSに出て、その舞台で戦いたいという思いがある。自分たちは次の2つを必ず取って、結果を待つだけです」
SR渋谷と田中は苦しみながら、もがきながら、何とかCSに手が届くところに這い上がってきた。そのプロセスにはきっと価値があるし、選手たちがそこから得る学びも少なからずあっただろう。とはいえファンが喜び、プロが評価されるのは結果だ。28日の劇的な勝利、シーズン中の苦闘がどのような「意味」を持つのか――。それが判明するのは、5月5日のレギュラーシーズン終了後だ。