最高峰の「日常」、高円宮杯U-18プレミアリーグが開幕! 高校年代の強豪チームが迎えた最初の一歩

川端暁彦

開幕白星の王者・青森山田イレブン。成長へのどん欲さは群を抜く 【撮影:川端暁彦】

ピラミッド構造のリーグ戦

 高円宮杯JFA U-18サッカーリーグは、日本サッカー協会(JFA)が主催する高校年代のリーグ戦の総称だ。全国を東西2ブロックに分けて開催されるプレミアリーグを頂点に、関東・九州といった9地域のプリンスリーグをその下に、さらに46都府県リーグおよび道ブロックリーグ以下のリーグがさらに連なるピラミッド構造を形成している。

 リーグ戦の試合は原則として年間を通じて開催され、ホーム&アウェイ方式が基本。4月に開幕し、雪国を除いて冬季近くまで開催されるのが一般的な流れとなっている。

 参加チームは、高校サッカー部やクラブチームといった垣根を取り払う形になっており、セカンドチームの参加も可能。例えば青森山田高校であれば、トップチームが頂点のプレミアリーグ、セカンドチームがプリンスリーグ東北、サードチームが青森県リーグ1部にエントリーするといった具合に、プラミッド構造に沿う形で参加している。

 影山雅永技術委員長は「部員の多いチームなら3年間1度も公式戦に出ない選手が大半を占めるのが当たり前。そういう“普通”はやめていきましょうというのが、日本サッカー協会としての基本的な考え方」と話す。

 プレミアリーグを頂点とする現行のピラミッド構造のリーグ戦がスタートしたのは2011年のこと。こうした階層的なリーグ戦のシステムは下の年代にも拡充されて整備されており、いまサッカーをしている選手たちにとって、「毎週リーグ戦の試合があるという日常」が「当たり前」になってきた。

 25年前には、「高校生にリーグ戦なんて必要ない」「年間を通したリーグ戦の運営なんてできるはずない」という意見が会議で当たり前に話されていたことを思えば、実に大きな変化である。

 余り安直に結びつけるものでもないとも思うが、現在の日本代表が過去最高と言われるタレントに恵まれている一つの背景に、こうしたリーグ戦の整備を進めてきた成果もあるように思う。

 そんな「日常」になったリーグ戦の価値はおのずと上がってきた。近年は高校サッカーチームもJリーグのユースチームも「プレミアリーグに上がりたい(残りたい)」と、一つの目標としてのウエイトが高まりつつある。以前と少し違うのは、高校サッカーの監督が「強くなるためにはレベルの高い日常が必要で、そのためにプレミアリーグへ参加することが必要」と捉えるようになったことだ。

 また、より現実的な問題として、意識の高い中学生が進路を選ぶ際に、「どのリーグに所属しているチームか」を一つの重要な材料にするようになったのも大きい。このため、シーズンの目標、あるいは部としての中期的な目標として「プレミアリーグ昇格」を掲げるチームも増えてきている。

 もちろんJリーグのユースチームにとっても、この場がある意味は大きい。横浜FCユースの和田拓三監督が「このリーグには本当にいろいろなスタイルのチームがいますし、そこで勝利を目指して本気で戦う経験は選手たちの成長にとって本当に大きい」と語るように、「プロを目指す選手を鍛える場」として重視されるようになってもいるわけだ。

王者・青森山田、開幕を制す

喜びを爆発させる青森山田MF川口遼己。先月までセカンドチームにいた選手だ 【撮影:川端暁彦】

 高校年代のリーグ戦における最高峰と位置付けられる高円宮杯プレミアリーグが4月6日に開幕を迎えた。EAST(東日本)、WEST(西日本)の2ブロックに分かれての開催となるリーグを昨季制したのは、EASTが青森山田高校、WESTがサンフレッチェ広島ユースである。そして東西王者が対決するファイナルを制したのは青森山田。彼らはその勢いのままに冬の全国高校サッカー選手権をも制し、“二冠”を達成した。

 この強かったチャンピオンチームに比べると、今年のチームの評価はここまで高くはなかった。1月末に行われた東北高校サッカー新人大会では優勝を逃し、春の遠征でも負けが続いた。「今年の青森山田は強くない」。そんな評判は、選手たちの耳にも入っていた。

「彼らもずっと不安だったと思う」と、正木昌宣監督はそんな選手たちの心情をおもんぱかる。ただ、青森山田にはやはりチーム強化のベースがあり、ノウハウもある。指揮官は市立船橋高校との開幕戦に向け、先月までセカンドチームでプレーしていたMF川口遼己を先発に大抜てき。選ばれた本人も「ビックリした」という起用だったが、その川口がこぼれ球から決勝点を沈めるなど得難い活躍を披露。チームに「自信につながる勝利」(正木監督)をもたらした。

 川口は「セカンドチームで活躍していれば、絶対に見ていてもらえると思っていた」と言う。ここでの抜てきは自身にとっても想定外だったと言うが、セカンドチームが戦うプリンスリーグ東北も同時に開幕を迎える。その大会に向けてのモチベーションもあり、気持ちを落とさずトレーニングを続けていたことが結果につながった。

 そのプリンスリーグ東北の開幕戦では「さっそく上がってきたばかりの新入生が出て点を取って勝ちました」と正木監督は嬉しそうに話す。
「ここにいる選手たちも、青森に残っている選手も、ここからが競争になります」

 現時点のチーム力は昨年のチームより落ちるのは否めない。この日も「理想を追うだけでなく、今の自分たちにできることをやる」(正木監督)という忍耐のサッカーだった。ただ、指揮官の様子からは、リーグ戦で試合を重ねる中で競争を重ねてブラッシュアップしながら、よりレベルの高いチームへ仕上げる自信も見え隠れした。

 一方、敗れた市立船橋もこれで終わりではない。「負けた後」があるのがリーグ戦の醍醐味(だいごみ)であり、選手とチームを成長させる要素となる。伝統ある名門の主将にリーグ開幕直前に指名されたDF岡部タリクカナイ颯斗は、「勝てる試合だった。つまらない失点をしてしまって、決めるところで決められなかったのは自分たちの甘さでしかない。練習からもっとこだわってやれるようにしたい」と語る。

 中村健太コーチも「トレーニングの質、雰囲気からもっと追求していく必要がある。指示を待つのではなく、選手たちから動けるようなチームにしていきたい」と、リーグ戦を通じた「成長」にあらためてフォーカスしていく考えを明らかにしていた。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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