2歳の娘と共にルーキーイヤーをスタート! 22歳のママゴルファー神谷和奏の挑戦

北村収

先輩ママゴルファーからの教えも大きい

昨年のプロテストでプレー中の神谷和奏。咲凜ちゃんの存在はゴルフにも良い影響を与えているという 【Photo by Atsushi Tomura/JLPGA via Getty Images】

 国内女子ツアーではツアー23勝の横峯さくら、ツアー4勝の若林舞衣子など、現役で活躍中で会場に子供を連れてくることもあるママさんゴルファーが少なくない。神谷も多くの先輩からアドバイスをもらっている。

「茂木宏美さんと交流をさせていただく機会があったのですが、その時に言われた『すべてを手のひらの上に乗せるのは難しい』という言葉が心に残っています。自分の夢を果たすために諦めなくてはいけない部分が出てくる覚悟を持たなくてはいけないというか、一方でできる限り娘には寂しい思いをさせないように頑張ろうと思いましたし、その部分は深いです」と先輩からの言葉を大切にしている。

「大西葵さんにもアドバイスをいただきました。大西さんは練習ラウンドでしたがお子さんの写真を見て可愛いといいながらラウンドしていて、私もキャディバッグにつけて励みにしていますが、やっぱりみんな(子供と離れる)寂しい部分もありながら、それを励みに変えているし、それが強さの秘訣というか秘密があるのではないかと感じています」
 他の子供がいないプロからも声をかけられることが少なくないという。以前、先輩から「切り開いてくれてありがとう」と言われたこともある。

「結婚したら終わりとか、期待されなくなってしまう選手がすごく多いんです。実際に私も(子供ができた後)いつまでプロテストを受けているのと言われたことがありました。それが現状というか、世の中の一部の人はそのように考えているようなので、同じ境遇にある女性に勇気を与えられるようなことができたのは良かったと思っています」

今季の目標はプロとしての1勝と家族で出かけること

 今季のプロゴルファーとしての目標を聞くと、「まずはプロとしての1勝。そしてステップ・アップ・ツアーの賞金ランキングで2位以内に入ることで来季のレギュラーツアーの出場権を獲得したい」と語ってくれた。

 そしてもう一つの目標は家族と出かけること。「いちご狩りも結婚して子供ができてから初めて行ったんですが、幼い頃からずっとゴルフばかりで、やったことがないことが多かったんです。だから、それを娘と一緒に体験したいです」。

トーナメント会場での託児所を積極利用

 JLPGAのトーナメントのいくつかの試合には託児所が用意されている。神谷もプロテスト合格後に出場したトーナメントの出場優先順位を決めるクォリファイングトーナメント(1st STAGE)で早速利用。神谷の他に2名のプロが利用していたそうだ。

 今季もトーナメント会場に託児所がある場合は積極的に利用したいという。「朝もギリギリまで会えて、練習が終わってからもすぐに会えるという安心感があります。保育士さんが見てくれているので、やっぱり安心ですし、本当にありがたいです」。

 神谷を初めとして小さな子供と一緒にツアーを転戦する女子ゴルファーは増加傾向にあるが、その裏には大会関係者が実施しているサポート体制がある。

娘のおかげで家族との繋がりも強化

4月5日に開幕する富士フイルム・スタジオアリス女子オープンに参戦する神谷和奏(練習日に撮影) 【本人提供】

 神谷と話をしているとところどころで関係者への感謝の言葉が出てくる。夫としてだけでなくコーチとしても支えている幸宏さん、今季常に帯同してもらう予定の母、そして様々な面で支えてくれているスポンサー各社など。一方でこのインタビューに同席した幸宏さんもとても楽しそうだし、お母さんも「一緒にツアーを周れることをとても喜んでいる」そうだ。神谷の話を聞いていると、子育てしながらツアー参戦することにより、娘との関係だけでなく、家族全員が強固に繋がっていっているような気がした。

 インタビューの最後に、「ゴルフを通じて神谷さんの家族の絆がどんどん深まっていますね」と筆者の感想を述べてみた。すると、「お互い支え合っている関係ができていることはとても良かったと思っています。海外のツアーですと、選手の家族が前面に出てきてとてもいいなって思っていますけど、自分の家族もそういうような関係が築ければと思います」。

 小さな子供を育てながらツアーに参戦する苦労話を書くイメージだったが、完全に覆された。もちろん子育ては大変だ。しかし、子育てと自分が目標にしてきたプロゴルファーとしての活躍の両方を目指すことを神谷は心から楽しんでいるように思えた。神谷だけでなく、神谷の家族も含めて。

2/2ページ

著者プロフィール

1968年東京都生まれ。法律関係の出版社を経て、1996年にゴルフ雑誌アルバ(ALBA)編集部に配属。2000年アルバ編集チーフに就任。2003年ゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、同年メディア部門のゼネラルマネージャーに。在職中に日本ゴルフトーナメント振興協会のメディア委員を務める。2011年4月に独立し、同年6月に(株)ナインバリューズを起業。紙、Web、ソーシャルメディアなどのさまざまな媒体で、ゴルフ編集者兼ゴルフwebディレクターとしての仕事に従事している。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント