中島啓太、古江彩佳ら教え子が世界で躍進! 選手の自信を養うナショナルチーム・外国人ヘッドコーチの教えとは?
DPワールドツアー(欧州ツアー)の「ヒーローインディアンオープン」で先週優勝を果たした中島啓太と米国女子ツアーの「スコットランド女子オープン」で2022年に優勝した古江彩佳 【Photo by Luke Walker(左)Mark Runnacles(右)/Getty Images】
3月31日夜、吉報が届いた。DPワールドツアー(欧州ツアー)の「ヒーローインディアンオープン」で昨年の国内男子ツアー賞金王である中島啓太が優勝を果たした。この中島など、アマチュアの頃にナショナルチームで指導を受けたガレス・ジョーンズの教え子たちが、今、海外で活躍中だ。
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徹底的にデータ活用する体制を構築したガレス・ジョーンズ
ジョーンズ氏の下でスイング解析やフィジカルなど各分野の専門家が連携して強化する体制を構築。徹底的にデータを採取して個々の選手に最適なプログラムを提供する体制を築き上げた。
高校生だった古江彩佳、西村優菜、吉田優利を指導
ゴルフのジュニア指導においては怒声が飛ぶのも当たり前だった中、ジョーンズ氏の笑顔があふれる指導はとても新鮮。斬新だったのは笑顔だけではなかった。取材を重ねていくと、そこには今まで聞いたことがない理論による指導があった。
2018年の日本女子オープンで西村優菜を指導していたガレス・ジョーンズ氏 【写真提供:日本ゴルフ協会】
コースマネジメントの根幹となる『ゼロライン』と『アウトボジション&インポジション』
この『ゼロライン』につけやすいショットの位置を『インポジション』といい、逆を『アウトポジション』という。コースマネージメントはグリーンから逆算して、最後にいかに簡単なパットを残すかということ。『ゼロライン』を見極めて、ゼロラインが残るエリアにボールを運ぶことを軸に攻略プランを立てていくのだ。選手のホールアウト後のコメントでも、「(グリーン上の)良いところに乗せられたのが好スコアの要因」という答えが多い。ピンの近くに寄せることよりも、選手は『ゼロライン』つけることに集中しているのだ。
なお、この『ゼロライン』というのは当然、事前の練習ラウンドで事前にチェックをしなくてはならない。つまり、事前ラウンドではショットなどの練習よりも、コース上のデータ収集により多くの時間を費やすことになる。
アマチュア時代の吉田優利を指導するガレス・ジョーンズ氏。事前ラウンドではショットなどの練習よりも、コース上のデータ収集により多くの時間を費やす。 【写真提供:日本ゴルフ協会】
徹底的なデータ、60ヤード以内の改善がスコアアップに直結
10〜20ヤードの改善がスコアアップに最も直結すると示されていたある選手の例で説明しよう。10〜20ヤードが平均して2.6ヤードに寄っていたこの選手は、平均2.0ヤードまで寄るように改善すれば0.4ストロークスコアがアップすると示していた。4日間大会では1.6ストロークになる。なお、ほとんどの選手が60ヤード以内が重要だと表示される。
なお、ピンまでの距離の5%の長さが平均としてカップに対する残り距離になる。60ヤードでは平均3ヤードのパットが残り、この距離のプロツアーでのカップイン確率は50%。この3ヤードのパットがパーセーブかバーディを取るパットになるので、ここのパフォーマンスがとても重要になる。
このようなデータも踏まえ、ジョーンズ氏は練習におけるショートゲームの比率を65%にすべきだと説く。今までロングショットやミドルショットの練習が多かった選手もデータを目の当たりにして、ショートゲームにより時間をさくようになるそうだ。
データの徹底活用により、スコア向上だけでなく選手の自信を養う
選手には(Confidence Anchors=自信のイカリ)というフレーズで説明。イカリ(錨)とは船を安全にとめておくイカリのことだ。また、キャンプなどで使用するテントの杭を例に説明することもある。テントの杭を自信を持つための手触り感のある根拠として、どんどん増やすようにと指導する。
イメージや感情的なものではなく、データに基づく根拠を積み重ねていくことこそが自信につながる。そのために、練習中もラウンド中もデータを取り、体のトレーニングにおいてもデータで成長を追っていくことの重要性を常に強調している。自信は誰かの意見やその時の感情によって左右されてしまいがちだが、自分の数値データを把握しておけば、より壊れにくい自信になる。