甲斐野央にとって、2023-24シーズンオフは例年にない注目を集める期間だっただろう。年明けに福岡ソフトバンクから、埼玉西武への移籍が急遽決定。慌ただしく過ごしたオフを経て、新天地で迎える初めての開幕を前に話を聞いた。（取材日：3月21日）

ーーこのオフにおける甲斐野さんの大きなトピックといえば、やはりライオンズへの移籍が急遽決まったことです。まずはその時のことを振り返っていただきたいのですが……。

　いきなり来ますね、結構割り込んだ質問を。ご飯を食べながら話しましょうか……冗談です（笑）。なんでも聞いてください。

ーーありがとうございます（笑）。移籍の連絡をもらったのはどんなタイミングでしたか？

　静岡での自主トレ前日でした。現地に入って準備を進めているところでしたね。

ーー心境としてはどうでしたか？

　率直に「僕なんやな」って感じでした。ただ、その時は先輩方やお世話になった方々に連絡しないといけないのが最初に来て、片っ端から電話していました。（移籍の）記事が出るのが数時間後と聞いて、それまでには伝えないといけなかったので、もう指が腱鞘炎になるぐらいバーッと連絡していました。

ーー先輩方から言われたことで特に覚えていることは？

　中村晃さんから「真剣勝負できるのが楽しみやね」と話をしてもらって「確かにな」と。次は敵チームで会うのかって実感が湧いてきましたね。

ーー自主トレではライオンのヘアバンドを身につけるなど、甲斐野さんらしく明るくトレーニングに励んでいた印象です。

　寂しい気持ちもある反面、いち野球人としてはチームが変わってもやることは変わらないなと思っていて。今年ホークスでやっていたとしても、後ろのイニングで投げるために体を作ってアピールしなきゃいけないのは根本的にあったし、自分の中では切り替えられていました。悲観することはなかったですね。

ーー自主トレのテーマはどんなものだったのでしょう？

　全球種をストライクゾーンにまとめられるように。いくら良い球を投げようがストライクに入らないと勝負にならないのは、自分の中で去年はっきり分かったんです。「良い球選手権」をやろうとする自分がいたんですけど、やるべきことはバッターを抑えることだなって。今年の自主トレはツーシームの取得もそうですが、全部の球種をまとめられるように細かく課題を砕いて取り組んだ感じです。

ーー子供の頃から今回加入するまで、ライオンズの印象はどんなものでしたか？

　同級生の松本航が、中・高・大と選抜チームや日本代表で一緒でした。それこそドラフト1位で入っていて、彼のおかげでピッチャーを諦めようかなと思ったくらいすごいんですよ。あと、対戦していて応援がすごいなって印象もありましたね。

ーーしびれる場面で投げたり、チームもポストシーズンで対戦していましたもんね。

　そうですね、セーブシチュエーションで森友哉さん（現オリックス）に逆転2ラン打たれたりとか。ネクストには中村剛也さんがいて、応援もすごくて……。源田（壮亮）さんも相性悪かったですけど、今は後ろで守ってくれるので嬉しいっす（笑）。

ーー新たなチームメートと関わる機会が増えたと思います。チームの中に入って印象が変わったことは？

　同級生だったら高橋光成はすごい選手。ライオンズのエースだし、正直相手にされないかもなって思ったんですよ。でもそれは違って、僕にもですが後輩に対してもアドバイスを求めるんですよね。野球の質問やトレーニング、食事のことも。そういう一面があるんだなって。探究心があるからこんな選手になれるんだなと思いましたね。

ーー松本さんと再びチームメートになったことはどうですか？ 新天地でもともと知っている人がいると心強い？

　めっちゃ仲良いですよ。そして優しい。それこそ光成の連絡先も航から教えてもらいましたし、いろいろ教えてくれて助かった部分が多いですね。ただ、電話出るのはめちゃくちゃ遅い。絶対一発で出ないです（笑）。

ーー松本さんは野球以外にもプライベートのことも助けてくれたんですか？

　自宅をどこに決めようとか、いろいろ相談しました。交通の便についてとか。

ーー今回はご家族も一緒に引っ越された？

　そうですね。身の回りのことは妻が全部やってくれました。

ーー大学時代以来となる久々の関東地方はどうですか？

　いやもう、便利です。良いところだなと思いますよ。休日は子どもメインになっちゃいますけど、公園やショッピングモールに行ったり……だいぶ慣れましたよ。