初出場のホープも加わった日本代表、世界選手権に臨む 3連覇がかかる宇野・坂本、“りくりゅう”は連覇なるか

沢田聡子

2連覇中の世界選手権に挑戦者として臨む宇野 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

ハイレベルな男子は激戦必至

 今季の世界選手権が行われるカナダ・モントリオールは、コロナ禍により中止された2020年世界選手権の開催地だった。4年を経て、世界選手権が観客の歓声と共にモントリオールの地に帰ってくる。

 今季特に進化が目覚ましいのは、男子シングルだ。昨季は宇野昌磨だけが果たした合計300点超えを、今季はイリア・マリニン(アメリカ)、鍵山優真、アダム・シャオ・イム・ファ(フランス)の3人が達成した。グランプリファイナル(昨年12月)ではフリーで4回転ループを決め、ISU(国際スケート連盟)公認大会で6種類全ての4回転を成功させた史上初の選手となったマリニンが、314.66という高い合計点をマークして優勝している。

 3連覇がかかる宇野だが、昨年末の全日本選手権後に行われた世界選手権代表会見では「順当にいけば、僕は優勝できない」と冷静に語った。

「2連覇している自分としていくというよりも、本当に僕が今まででの最高の演技をしなければ、優勝はないと思っている。自分の実力からして、3連覇ということに重圧を感じている場合では全くないかなと考えているので。それこそ最善を尽くすということだけを考えて、調整や試合に臨みたいなと思っています」

 客観的な発言だが、その奥に熱い闘志を秘めているのが宇野というスケーターだ。表現に注力すると宣言し、4回転サルコウは封印して今季に臨んだものの、若手の成長に触発されて再びアスリート魂に火がついたようにもみえる。代表会見で、世界選手権に向け4回転サルコウを構成に戻すか問われた宇野は、ステファン・ランビエールコーチと「練習を少しずつしていって、状況に合わせてやるかやらないか決めていこう」と話したことを明かした。4回転の本数が勝負を大きく左右するのは事実だが、宇野には観る者を魅了するプログラムという最大の武器がある。

 2月の四大陸選手権(中国・上海)で307.58という高い合計点を出し優勝した鍵山は、上昇気流に乗って世界選手権に向かう。昨季は左足首を故障した影響で全日本選手権のみの出場となり、我慢を強いられた。しかし怪我が回復した今季は、カロリーナ・コストナーコーチが陣営に加わった好影響もあり、表現力に磨きをかけて戻ってきた。

 四大陸選手権の記者会見で鍵山は、銀メダルを獲得した2022年大会以来の出場となる世界選手権について「300点出しても、勝てるか勝てないか分からない戦いになってくると思うので」と語った。

「もっともっと自分の技を磨いて、もっと自信をつけたいです」

 四大陸選手権で挑戦した4回転フリップのみならず、プログラムの細部まで意識して磨く意志を示した鍵山が、世界選手権でどんな演技をみせるか楽しみだ。

 そして、昨季四大陸選手権王者の三浦佳生も日本代表に加わり、初めて世界選手権のリンクに立つ。2022年に補欠からの繰り上がりで出場が決まったものの怪我のため欠場を余儀なくされた大舞台に、今回は正代表として臨む。1月のインターハイ、2月のタリンクホテルズカップ(エストニア・タリン)では新しい種類の4回転であるフリップに挑んでいる。モントリオールでも攻めの姿勢を貫き、伸び盛りの勢いをみせてくれそうだ。

“神試合”となった全日本選手権の立役者である3名の日本男子が、世界選手権でも高い実力を発揮することを期待したい。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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