ファームに新規参加 新潟&静岡が描く未来構想

「無」からの冒険に挑むくふうハヤテ 池田省吾社長が描く「NPBにはできない」新たな可能性

岩国誠

開幕までにやるべき準備が盛りだくさん

「ちゅ〜るスタジアム清水」の駐車場は練習日にも関わらず8割ほどが埋まっていた。球場へのアクセスも準備を進めている 【写真:スリーライト】

 スポンサーの獲得と並行して、さまざまな準備も同時に進めている。

「球団のホームページはまもなく立ち上がる予定です。今までは球団名もチームカラーも決まっていなかったので、オープンをギリギリまで引っ張っている状態でした。SNSもX(旧Twitter)とInstagramを同時に始めたいと思っています。球団グッズも3月15日の開幕には一部商品を出せるように進めていますが、(生産が)本当にギリギリで売れるものから売っていく感じになってしまうと思います」

 池田氏のプランでは、開幕までにキャップやレプリカユニフォームなど、応援に必要な最低限のグッズは揃えたいと考えているが、そのほかのグッズもシーズンを通して、順次揃えていく予定とのことだ。

「キャンプ中には平日でも車で来るファンの方が多くて、NPB選手の人気の高さを実感しています。非常に注目していただいていますが、遠方の方は毎試合球場に来ていただけるのは難しいと思っているので、違う形で応援していただけるように、いろいろなグッズを提供できたらと考えています」

 そのほかに、開幕戦の地元局地上波中継や、地元ケーブルテレビ局、インターネット配信での試合中継なども交渉を進めるなど、さまざまな準備に追われている中、まだまだやりたいことがあると言う。それは、静岡で活動する他のプロスポーツチームとの連携だ。

「ぜひやりたいと考えています。ひとつは、ベルテックス静岡さん(Bリーグ)と、清水エスパルスさん(Jリーグ)がバスケ教室とサッカー教室を同日に行って、途中で生徒を入れ替えたりしていると聞いたので、そこに我々も参加させてもらえないかと。ただ現状では、そこまで手が回っていなくて、それぞれのチームへご挨拶には伺っていますが、具体的な話しはできていない状態です」

 挨拶に訪れた際、ベルテックス静岡から、こんな提案も受けたという。

「実はBリーグ公式戦で、ファーム開幕戦のプロモーションにぜひ来てくださいと言っていただいています。非常にありがたいと思っていますし、そういうところから少しずつ連携させていただけたらと思っています」

 他にも、球場周辺施設の駐車場利用やシャトルバスの運行、地元の高校、大学の吹奏楽部やチアリーディングチームへ球場でのパフォーマンスを依頼するなど、地域と連携しながら、さまざまな部分で準備を進めている。

NPBの既成概念にとらわれない発想を

池田省吾社長は、NPBの球団ができないような「あっと驚くような」ことを考えている 【写真:岩国誠】

 まもなく迎える初年度のシーズン。球団として、どれくらいの目標を設定しているのか。

「観客に関しては、堅く見積もって1試合平均700人くらいだと思っていて、年間では約5万人。それを目安に頑張りたいなと思っています。利益の方は初年度は初期投資が多いので、3年後になんとか黒字になるような土台づくりをしていきたいと思っています」

 そうした努力もすべて、野球でさらに上を目指そうと新チームに入団してきた選手たちのため。旗揚げメンバーの彼らに初年度から期待することは何か。

「入団してくれた選手たちは、25歳前後が多く、今年ダメだったらユニフォームを脱ぐくらいの覚悟で来ています。チームとして『育成と再生』を掲げているので、そういう選手がひとりでも多くドラフト指名を受けてほしいし、NPB経験者は(既存の12球団へ)移籍してほしい。そういう選手を出していきたいと思っています」

 現在、球団運営を行っていくフロントスタッフは池田氏をはじめ、ようやく4名まで増えたが、あと2人ほど採用を検討しているという。今、チームに欲しいのはどんな人材なのか。

「必ずしもプロスポーツ事業の経験がなくてもいいと思っています。新しいチームですし、新しいことをやっていこうとしているので、逆にプロスポーツの経験があることが邪魔になってしまうかもしれないですからね。試合中にドローンを飛ばしたり、選手全員にカメラをつけたりとか、そういう発想を持ってやっていきたいと思っているので」

 チーム名にもある「ベンチャー」とは「冒険」という意味がある。まったくのゼロから作り上げていくプロ野球チームが今後、どんな影響をNPBに与えてくれるのか。既成概念にとらわれることなく、期待しながら今後を見守りたいと思う。

<企画構成:スリーライト>

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著者プロフィール

1973年3月26日生まれ。俳優志望に見切りをつけ、32歳でプロ野球を取り扱うスポーツ情報番組のADとしてテレビ業界入り。Webコンテンツ制作会社を経て、フリーランスに転身。それを機に、フリーライターとしての活動を始め、ロッテ、西武を取材。現在も映像ディレクターとwebライターの二刀流でNPBと独立リーグの取材を行っている。

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