アジアカップで日本の「収穫」となった毎熊晟矢 序列を上げたSBが手にした課題と次なる目標

安藤隆人

堂安、久保と好連係を見せる

バーレーンとの1回戦では堂安の先制点に絡んだ 【写真:REX/アフロ】

 このパフォーマンスで信頼を掴んだ毎熊は、決勝トーナメント初戦のバーレーン戦もスタメン出場を果たす。

「相手が前回(インドネシア)と違って4バックだったので、攻撃に関してはやりやすいと思った。高い立ち位置を取って破ることを狙った」と、より攻撃的な姿勢を見せて、インドネシア戦同様に堂安、久保とのトライアングルで攻撃を活性化させた。

 前半31分、左サイドの遠藤航から中央に絞った毎熊にパスが届くと、堂安のプルアウェイの動きによって開いたシュートコースを見逃さずに右足で目の覚めるようなミドルシュート。左ポストに直撃したボールのこぼれを堂安が押しこんで先制点を引き寄せた。

「直前に相手にシュートを打たれて、モニターを見たら(シュート数が)0-1となっていたので、『けっこう押しこんでいるのにシュートが打てていないな』と感じたし、相手が引いていたので中のスペースでボールを受けたら狙えると思っていた」

 試合後にこう話したように、負けたら終わりの緊迫した試合の中で冷静に周りや戦況を見ていたからこその、『必然』のシュートだった。試合後、堂安は毎熊との連係に大きな手応えをつかんでいた。

「マイク(毎熊の愛称)との関係性はいいと思います。まだ数試合しかやっていないですが、彼はサイドラインで勝負できるし、1対1も強いので、僕は内側を取れる。そこにタケ(久保の愛称)が絡んでくると、より自分とタケがボールを持っている間に(毎熊が)サイドを追い越してきてくれる。もっともっと彼を生かせるし、彼も僕を生かせると思うので、試合を重ねるごとによくなっていきたい」

イラン戦で感じた「厳しさと難しさ」

 準々決勝のイラン戦でも2人と共にスタメン出場を果たした毎熊は、右サイドで息の合った連携を見せた。だが、後半に入るとイランの徹底したロングボールの対応に追われ、思うように攻撃に転じられなかった。結果は1-2の敗戦。それでもコンディションが万全ではないDF板倉滉のカバーリングに軸を置きながら全体のバランスを取るなど、守備面で貢献を見せていたのは間違いなかった。

「僕はヨーロッパのチームと戦った経験が少ないので、『アジアではどう』とは言えませんが、国際大会での厳しさと難しさを感じました」

 試合後のミックスゾーン、彼は試合中と同じ冷静な表情で語ってくれたが、言葉の節々に強い想いを感じた。板倉へのカバーリングについて話を振った際、「いつもカバーしてもらっているからこそ、(自分が)カバーをする意識は常に持っています」と前置きをした後にこう口を開いた。

「今日は僕のところに(相手が)2人いる場面が多かったのですが、その中でも『1人でも守れるよ』と言えるような力が欲しいなと思いました。それに僕が成長できれば、CBへのカバーはもっとできると思いますし、押し込まれている中でも試合展開を変えられるくらいの選手にならないといけないと感じた。勝ちにきた相手に対して勢いを個で止める力を身につけないといけないと思いましたし、もっともっとやらなきゃいけないことは多いなと感じました」

 毎熊にとって初めてのアジアカップは、自らの序列を一気に押し上げることに成功したと同時に、明確な課題と目標を手にした大会になった。

 3月には、いよいよアメリカ、カナダ、メキシコが共催する2026年のW杯に向けてのアジア予選が再開する。毎熊の成長は、より重要な戦いを勝ち抜くためには必要不可欠な要素だろう。確かな自覚を胸に刻んだ彼の躍動から、目を離してはいけない。

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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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