堂安律、インドネシア戦から見えた変化 「10番」の覚悟と日本を引っ張るリーダーシップ

安藤隆人

思いは「自分」から「チーム」に

今の堂安(右端)は年下の選手、代表キャリアが浅い選手を引っ張る立場だ 【写真:REX/アフロ】

 2022年カタールW杯における堂安の活躍は皆さんもご記憶の通りだ。ドイツ戦とスペイン戦での同点ゴールなど躍進の立役者となり、W杯後は自ら志願して日本の10番を背負う象徴的な選手となった。

 目のギラつきはずっと変わらない。だが、W杯後に明らかに彼のチームに対する考え方、姿勢が変わってきたように見える。そんな問いを投げかけると堂安は「覚悟の問題じゃないでしょうか」と受け、こう続けた。

「正直、この立場になるまで、『自分が活躍するんだ』、『自分が目立ちたい』とか、『自分のための日本代表だ』と思いながらやっていました。でも、W杯が終わってからそのエゴが全く消えたんです。自分が10番をつけたいと言った理由も、エゴから来たのではないんですよね。よりチームのために何をすべきか考えるようになったし、自分ももう25歳で立場も理解しています。そういう点では代表が9連勝、10連勝をしているときに『悪い時は絶対に来る』と自分の中では分かっていましたし、悪い時に誰かが立ち上がって、率先して、何かを見せて、背中で示すことが大事だと思っていました」

「俺が」というギラついた良さを残しながらも、チームの勝利のために献身的にやるべきことを率先してやり切る――。そんなプラスアルファに成長が見て取れる。

堂安が目指すリーダー像とは?

 今回のアジアカップのメンバーには、堂安より年下や代表歴が浅い選手もいる、その中で自分がリーダーとなってけん引していく覚悟を、彼は10番とともに背負ったのだ。

 では、どういうリーダーになりたいのか?

「俺のことを見て『かっこいい』と思ってくれる選手が出てきたらいいなとも思います。生き様であったり、『男としてこの状況で燃えなきゃダメでしょ』『このまま終わっていいのか』と背中で問い掛けたりしていけたらなと。(鈴木)彩艶や(菅原)由勢などの若い選手が今、いろんなことを経験していて、4年前の自分とかぶるんですよね。自分が悪かったときに考えすぎてしまっている部分もあって自分の世界に入り込んでしまったり、負の連鎖が続いて、自分が悪いわけじゃないのに失点の時に絡んでしまったりしてしまう。その姿は過去の自分にリンクするところがあった。ボールを失ってもいいし、抜かれてもいい。ダッシュして戻れば取り返せるし、ファウルしてでも止めればいい。そこさえできれば、彼らのクオリティーがあれば問題なくやれるからこそ、そこを強調して伝えました」

 インドネシア戦のパフォーマンスは、決意表明でもあった。

「丸くなろうとは思っていませんが、僕はチームのために戦う。こう見えて意外とフォア・ザ・チームなので」

 当然、これで満足しているわけではない。次からは言い訳無用、一発勝負の決勝トーナメントが幕を開ける。よりリーダーとしての資質が問われる戦いを前に、堂安律はより鋭い眼光でチームとこの先を見つめている。真のリーダーとしてあるべき自分を追い求めながら。

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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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