チームでパリ五輪出場を目指すマーメイドジャパン 「次の夏に向かっていける大会に」2月の世界水泳ドーハに臨む

沢田聡子

メンタルの安定と思いやりが強みの日本チーム

中島貴子ヘッドコーチ(後列左端)は世界水泳福岡後、メンタルの重要性を知ったという 【写真は共同】

 中島貴子ヘッドコーチも取材に応じ、この日のチームFRについて語っている。

「ハイブリッドフィギュア(基本の動きと独自の動きを複合した脚技。難度を上げ高得点を狙う)はある程度良くなってきたのですが、後半部分のハイブリッドはまだまだ修正をしないと、このままだとベースマーク(最小の難易度を意味する。事前に申告した構成通りに実施できなかったという判定)になる。もう一回戦略を立て直して、変えるにしても泳ぎ込まないと間に合わないので、早急に検討し直したいと思っています」

 また、一つベースマークがつくと大きな減点につながる新ルール下で戦うために導入した、メンタルトレーニングにも言及した。

「福岡大会後、メンタルの部分が非常に重要になってくるということを知りましたので、メンタルトレーニングを毎月一回行うようにしています。個々にやるのではなくて、チーム全体で話し合いながら、自分の考えを述べたり、他の人がどういう準備をしていくのかを聞いたり、毎回違うテーマに沿って時間を設けています」

 中島ヘッドコーチは「メンタル的な部分は安定してきている」と手応えを口にしつつ、付け加えた。

「でも本当に試合になると、またどういう状況になるのか分からないので、常に周りを感じられる選手を(育てたい)。みんなお互い思いやりを持ってやっていると思うので、そこに関してはどの国にも負けていないんじゃないかなと思います」

「去年一年、ワールドカップのカナダ大会から過ごしてきて、みんなどの国も同じ恐怖心を持って戦っているということを知ったので、去年ほどの恐怖心は大分なくなっていると思うのですが…ハイブリッドフィギュアでベースマークになれば思っている以上に順位が下がるという恐怖は、今薄れてしまってきていると思うので。もう一回シビアに自分達の演技を見つめ直して、確実に戦える準備をしっかりしていきたい」

 昨年大みそかまで合宿をしていた代表は年明け1月3日に始動したが、1日に起きた能登半島地震の影響を受けた。チームには石川県出身の木島萌香がおり、家族も無事で3日に集合することはできたものの、「未だに不安な気持ちで夜も眠れないという状況を過ごしているので、彼女も葛藤しながら戦っている」と中島コーチは思いやった。

「私達には、今何ができるかということを…スポーツの力で皆さんを勇気づけられるんじゃないかと思って、頑張っています」

 日本代表の大きな変化としては、昨年10月、エースとして長年活躍してきた乾友紀子さんが引退した。2021年東京五輪後の乾さんは非五輪種目であるソロに専念していたものの、世界選手権福岡大会では「乾選手の技術力のおかげで、日本の技術力が高いというイメージを持って戦えた」と中島コーチは振り返る。来たるドーハ大会は乾さん不在で臨む世界選手権になるが、それでも「日本は強いね」とみられる代表でありたいと中島コーチは言う。

「乾さんは引退したのですが、私達だけでも『強いね』と言ってもらえるように、しっかり結果を出していきたいと思っています」

 チームキャプテンの吉田も、力強く語る。
「絶対にパリ五輪出場権を獲得して、次の夏に向かっていける大会にしたいと思います」

 新たな強さでパリへの道を切り開くため、マーメイドジャパンはドーハに向かう。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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