引退後、初の大仕事に挑む解説者・小野伸二の矜持。アジアカップ制覇のポイントは「チーム力」

元川悦子

アジアカップ制覇の自信はW杯につながる

2002年日韓W杯の小野伸二。彼らは2000年アジアカップ制覇の自信をW杯16強につなげた 【Photo by Gunnar Berning/Bongarts/Getty Images】

――当時の小野さんたちを思い返すと、2000年アジアカップ制覇から2002年日韓W杯16強入りという前向きな流れが生まれました。今の代表は2026年北中米W杯優勝を目指していますが、それを視野に入れると今回のアジアカップ制覇は大きなステップになります。

 そうですね。優勝というのは選手にとって確実に自信になります。苦しい戦いを勝ち抜いて頂点に立った経験には大きな価値があるし、その後の大会にもつながっていく。今の代表は「アジアカップ制覇は当たり前」と見られているからプレッシャーも大きいでしょう。それをみんなで乗り越えて優勝を手にしてほしい。それによってW杯への道も開けてくると思います。

 W杯優勝は日本国民全体の夢。カタールW杯でドイツやスペインに勝った試合を見て「大舞台でこういう強豪に勝てるチームになったんだな」と嬉しく感じましたし、可能性としては近づいていると言っていい。実際、それだけの選手が集まっていますからね。

――そのためにもいいスタートを切ることが肝心。1月14日の初戦はフィリップ・トルシエ監督率いるベトナムが相手です。

 どんな大会でもやはり初戦が大事。そこでどういうパフォーマンスを出せるかが重要なポイントになります。今のトルシエがどういうサッカーをしているか分からないけれど、日本戦に備えていろいろな対策を練ってくるでしょう。そうは言ってもクオリティの差はある。そこで大事なのは先制点ですよね。最初に点を取られると厳しくなるので、1試合1試合決勝戦という気持ちで挑んでいくべきでしょう。

 ただ、何度も言うように、今の代表は選手層が厚いので、誰が入っても全然見劣りしないですし、常にいい準備ができている。必ずやってくれると信じています。

2024年は自分に何が合うのかを見極めたい

12月3日の現役ラストマッチで完全燃焼した小野伸二。第2の人生がいよいよ幕を開ける 【写真:アフロスポーツ】

――アジアカップ後の3月には小野さんと同じシドニー五輪世代の宮本恒靖さんが日本サッカー協会会長に就任します。若返るサッカー界への注文や期待はありますか?

 会長に向かって注文はできないですよ(笑)。でも僕自身は日本サッカー界のためにできることは精いっぱいやりたい。ツネさんが会長としていろいろ動いてくれると思うし、代表選手上がりの人材がどんどん活躍するようになれば、また違ったサッカー界になっていくのかなと感じます。

 僕自身は全国各地に行って、ちびっこたちにサッカーの楽しさを伝える活動をしていきます。コンサドーレ札幌とも引き続き関係を築いていくので、チームがよくなるためのアドバイスを自分なりに考えながらやっていければと思っています。そういうことをやりながら、本当に何が自分に合っているのかを見極めたい。2024年はそういう時間にしたいですね。

――指導者に興味は?

 それもありますけど、リフレッシュポイント確認しないといけないですね、更新も大変なので。今後、新会長がいい案を出してくれるんじゃないかと期待しております(笑)。

――最後の小野伸二の未来像は?

 先のことは全然考えないので、明日が来ればいい(笑)。とにかく1日1日を大事にしつつ充実させて、楽しい時間を過ごし続けられればいい。今はそういう感覚ですね。

解説という仕事でも、視聴者を笑顔にするような語り口を見せてくれるはずだ 【スポーツナビ】

 現役ラストマッチ後、「楽しむ」というポリシーとともに記者会見を行った通り、小野伸二は何事もエンジョイしながら取り組む人物。アジアカップでの日本戦解説という大仕事も視聴者を笑顔にするような語り口を見せてくれるはずだ。彼のセカンドキャリアの第一歩を興味深く見守りつつ、日本代表の5度目の戴冠を心待ちにしたいものである。

『AFC アジアカップ 2023 カタール』予選リーグ日本戦のDAZN配信スケジュール

【独占配信】1 月 14 日(日)日本 vs ベトナム
キックオフ 20:30
実況:下田恒幸 解説:槙野智章 ゲスト:小野伸二 現地リポート:佐藤寿人
スタジオ MC:野村明弘 スタジオ解説:李忠成

1 月 19 日(金)イラク vs 日本
キックオフ 20:30
実況:桑原学 解説:林陵平 ゲスト:小野伸二 現地リポート:佐藤寿人

【独占配信】1 月 24 日(水)日本 vs インドネシア
キックオフ 20:30
実況:野村明弘 解説:槙野智章 ゲスト:小野伸二 現地リポート:佐藤寿人

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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