「フィギュアスケートは、美しくてダイナミック」 全日本2位の千葉百音、高い志が支えるたおやかな滑り

沢田聡子

新境地となるショート『黒い瞳』を自分のものにした千葉 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

「背水の陣」で臨んだ全日本

 千葉百音は、全日本選手権・ショートで、一年前と同じ3位につけた。

 優雅で上品な印象がある千葉にとり、アップテンポで強いアクセントもある『黒い瞳』を使う今季ショート(ミーシャ・ジー氏振付)は挑戦のプログラムだ。シーズン前半は少し忙しそうにみえた振付も、全日本ではしっかりと自分のものにし、滑りこなしていた。3回転フリップ+3回転トウループ、ダブルアクセル、3回転ルッツと3本のジャンプも決め、68.02と70点近い高得点をマークしている。

 昨季はジュニアながら四大陸選手権に出場し銅メダルを獲得した千葉は、期待の新鋭として今季から本格的にシニアに参戦した。シニアデビューシーズン開幕を前に、千葉は拠点を仙台から京都に移し、精鋭が切磋琢磨する木下アカデミーに移籍している。さらなる進化のため大きな決断を下して迎えた今季だったが、前半のグランプリシリーズでは苦戦を強いられた。ジャンプが安定せず、スケートアメリカ(10月)6位、フランス杯(11月)9位という結果に終わったのだ。

 不調の背景には、健康上の問題があった。春頃から息苦しさを感じており、フランス杯後に「運動誘発性ぜんそく」と診断されたという。薬の服用で症状が緩和し、精神的にも上向いた千葉は、全日本に向け充実した練習を積んできた。

「シーズン前半はやはり不調続きで、なかなか試合で結果として出なかったのですが……。フランス杯が終わってから『私には全日本しかない』という気持ちで練習に臨んできたので。自然と背水の陣という状況で、体調も崩れることなく練習を積めていたのが、調子を上げていけたきっかけ、理由だと思います」

 一年前の全日本・フリーでは、千葉は冒頭のジャンプで転倒し、不本意な演技になってしまった。フリーだけの順位は7位で、総合でもショートから順位を二つ落として5位という成績だった。

「去年はショートプログラムで70点台(71.06)が出て、もうその時点ですごく嬉しかったのですが、フリープログラムでは初めての最終グループの圧迫感に押しつぶされて、本番転倒しちゃったというところがあったので」

 千葉は一年前の全日本についてそう振り返り、今回はその経験が生きたと分析している。

「その点、(今回は)2年目の最終グループで、『ああそうだ、そういえばこんな感じの緊張感だった』って(笑)。そんなに感じている余裕もないくらい緊張していたのですが、少しは経験がつながったのかなと思います」

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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