資金と人材のエコシステム構築、DX時代のスポーツ産業の発展を目指して スポーツエコシステム推進協議会が設立記念イベント

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一般財団法人スポーツエコシステム推進協議会が設立イベントを開催 【スポーツナビ】

「Sports Ecosystem Conference2023~一般財団法人スポーツエコシステム推進協議会設立記念イベント~」が12月21日、東京ミッドタウンで開催された。同協議会では「すべてのステークホルダーと共にスポーツの未来を創る」というパーパスのもと、スポーツにおける「権利の明確化」「社会的価値の創出」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」などをテーマに掲げ、透明性が確保された資金と人材のエコシステム構築により、スポーツの価値を高めることをミッションとしている。

 同協議会は2022年1月31日にDX時代のスポーツ産業の振興とスポーツエコシステムの確立を目的とし、任意団体として30社で発足。23年7月18日に一般財団法人を設立し、この12月から本格始動することとなった。23年12月21日現在で会員企業数は109社となり、Bリーグ、リーグワン、Tリーグ、Jリーグ、Wリーグらプロスポーツリーグともパートナーシップを締結している。

 イベントの冒頭で、「協議会の活動を通じて、企業、地方自治体、政府、スポーツ団体、選手らステークホルダーの皆さんとスポーツの未来を創るハブになりたい」と挨拶に立った同協議会の稲垣弘則代表理事は、スポーツ産業の発展において重要なことは「統合」と「循環」であると言及。そのうえで、掲げている3つのミッション「権利の明確化」「社会的価値の創出」「DX」を推進しスポーツエコシステムを実現することにより「今後、協議会が資金・人材・知識の循環を生み出すプラットフォームとして機能することになると考えています」と、同協議会が目指すスポーツの未来への展望を語った。

村井満氏が語るスポーツ競技団体のDX化

村井満氏が語るスポーツ競技団体のDX化 【スポーツナビ】

 本イベントで行われた5つのセッションにはスポーツ団体、選手、企業、国会議員などあらゆる分野のステークホルダーがパネリストとして登壇し、それぞれの立場や経験から意見を述べた。

「スポーツの未来を創る」をテーマにしたセッション(1)では日本バドミントン協会会長を務める村井満氏がJリーグチェアマン時代の経験も踏まえつつ、「各競技協会、チームなどデータの持ち方がまとまっておらず、重複投資が多すぎる。これを1つのパターンにまとめればだいたいOKだと思うんです。『統合』『循環』『エコ』という意味でのテーマそのものであり、経理も法務も人事もほとんどの競技団体は基本構造が同じなのになぜ重複投資をするのか。このあたりの生産性を上げていくことが重要だと思います」と、DXを駆使することで生まれるスポーツ競技団体の発展について提言。また、ナショナルコンテンツとローカルコンテンツをデータなどと組み合わせて顧客と共有することができれば「ワクワクすることができるのでは」と語った。

エスコンフィールドが目指す社会的価値の創出

エスコンフィールドが目指す社会的価値の創出 【スポーツナビ】

 一方、「社会的価値の創出」のミッションに関わるところとしてはエスコンフィールドHOKKAIDOを題材としたセッション(4)「スポーツの非財務価値・社会的価値の可視化の必要性と今後の課題」に、株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメント取締役事業統轄本部長の前沢賢氏が登壇。エスコンフィールドを単なる球場という“点”ではなく、地域発展も含めた“面”と捉えており、既存の「球団事業」「球場事業」に「不動産開発事業」を加えて立体的に取り組むことで「城下町を作るイメージ。お城が球場、城下を臨む街並みが不動産事業であり、これらがうまく重なることが我々の中ではすごく重要です」と開発コンセプトを語った。

 しかしながら、地域のスタジアム・アリーナ開発における課題は依然として残されたままであり、前沢氏は「これまでのプロ野球で言いますと、わざわざチケットを買ってお越しいただいてもたかだか2、3時間で帰られてしまい、すごくもったいない。片や、著名な遊園地では1日2食を食べてもらえる仕組み。このあたりをもっとうまくスポーツ界は取り組んで解消すべきことだと思います」と指摘している。

Jリーグの未来予想図、これからの課題

「秋春制」移行の理由と合わせて野々村芳和チェアマン(右)は自身が描くJリーグの未来を語った 【スポーツナビ】

 また、セッションの合間には同協議会の評議員でもある野々村芳和Jリーグチェアマンが「Jリーグの未来予想図」をテーマに稲垣代表理事と対談を行った。

 2026年から27年にかけてのシーズンから「秋春制」に移行することにも触れ、「世界と戦うためにはシーズンを変える決断をしないといけない。世界一になることを本気で思っている選手、子供たちが増えている中で、我々フロントサイドのマインドを変える意味でもシーズンを変えて、世界と勝負することした」と野々村チェアマン。今後の取り組みに関してはパフォーマンスレートをいかに上げるかとともに、移籍金が安価なJリーグの市場をいかに世界のマーケットの中でも上位のポジションに持っていくかが課題であることを述べ「ビジネスとしてトップクラブが成功して、下のクラブにも育成のためのお金が流れる仕組みができれば世界との競争に勝てることにつながっていくのではないか」と、頭に描いているJリーグの未来予想図を語った。

 このJリーグの「秋春制」移行については、この日の最終セッション(5)「スポーツを取り巻く権利の明確化と権利ビジネスの在り方~スポーツデータの権利性と帰属、ヘルスケア産業の活用可能性を中心に~」でも触れられており、Jリーグ執行役員(マルチメディア担当)の馬場浩史氏は「日本と欧州の選手のデータが蓄積され、月ごとのパフォーマンスがどれだけ違うのか可視化されたことでいろいろな意思決定に貢献したと思います。その意味でもデータは様々な価値を生んでいることを体感した」とコメント。その一方で、データの収集・蓄積はコストがかかることから「いかに収益構造を作りながら、すべてのステークホルダーに貢献できるように整備するか。ここの循環システムを作ることが大事で、今後のパートナーシップの中で経済的な部分と活用の部分での両輪をしっかり回せるように、データの権利についても議論していきたい」と語った。

東京2020大会を経て日本社会がパラスポーツを見る目はどう変わったか、河合純一日本パラリンピック委員会委員長と瀬立モニカ選手が感想を述べた 【スポーツナビ】

 そのほか、セッション(3)「パラスポーツという希望」では同協議会評議員でもある河合純一日本パラリンピック委員会委員長とパラカヌー日本代表の瀬立モニカ選手が東京2020大会を経て感じた日本社会の変化について言及。また、2025年東京での開催が予定されているデフリンピックの成功に向けて現役アスリートである早瀬久美選手(女子マウンテンバイク)、亀澤理穂選手(女子卓球)が手話と動画でPRした。
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