ジャパンオープンで連覇を果たした日本チーム 坂本花織、島田高志郎、友野一希が滑った“挑戦”のプログラム

沢田聡子

ミスのない演技で、仕上がりの早さを感じさせた坂本 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

世界女王の風格漂う坂本の滑り

 毎年10月上旬にさいたまスーパーアリーナで行われるジャパンオープンは、本格的なフィギュアスケートシーズンの始まりを告げる3地域対抗の団体戦だ。プロ・アマチュアを問わず出場できる数少ない競技会でもあり、男女シングル各2名・計4名のスケーターがチームを組み、フリーのみを滑って競う。

 今季は10月7日に行われたジャパンオープンで、日本(坂本花織、宮原知子、島田高志郎、友野一希)は北米・欧州を抑えて連覇を果たしている。そして、日本の現役選手3人(坂本、島田、友野)が滑ったプログラムには、今季にかけるそれぞれの思いが込められていた。

 今季は2022年北京五輪から数えて2シーズン目であり、また2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪を2シーズン後に控えている。五輪の周期では中間でスケーターにとり挑戦的なプログラムを選択できるシーズンといえる。ジャパンオープンで滑った3選手のフリーも、新境地を開拓する意志をうかがわせるプログラムだった。

 試合前日の公式練習後、坂本は今季フリー『Wild is the Wind /Feeling Good 』(マリー=フランス・デュブレイユ氏振付)のテーマについて問われ、「ミステリアスな女性」と説明している。

「今までやったことがないジャンルだったので、最初は…というか未だに苦戦はしているのですが、シーズン終盤に向けてどんどん良くなっていけばいいなと思っています」(坂本)

 翌日、試合は女子シングルから始まった。モノトーンのシックな衣装をまとった世界女王・坂本は、最終滑走者として登場。ジャッジに背中をみせて立つポーズから演技を開始し、大きなダブルアクセルを決める。このプログラムではジャンプの前に様々な動きが入っているが、その中でも一番難しいと語っていた3度後ろに下がってから跳ぶ3回転ルッツも成功。「最近どうしてもレベル3になってしまう」と課題に挙げていたステップでも、エッジワークの練習の成果が出てレベル4を獲得している。すべての要素で加点を得て、シーズン序盤とは思えないような仕上がりのフリーを滑り切った坂本には、女王の風格が漂った。

 149.59というスコアを獲得した坂本が1位、現役さながらの滑りを披露して会場を沸かせた宮原が123.22をマークする大健闘をみせて4位に入り、女子シングルが終了した時点で日本は首位に立っている。

 男子シングルの2番目に登場した島田は、ピアノの音と共に滑り始めた。クラシックな黒の衣装が、手足の長さを一段と際立たせている。

 前日の公式練習後、島田は今季フリーの楽曲に『死の舞踏』(ステファン・ランビエール氏振付)を選んだ経緯を説明している。クラシックな曲に挑戦したいという意欲を振付も担当するランビエールコーチに伝え、二人で話し合って決めたという。当初はオーケストラバージョンが候補だったが、最終的には特別な雰囲気があるピアノバージョンを「自分のスケートで表現したい」と選択した。

「今までの自分とはちょっと違ったテイストで、ダークな感情表現や、クラシックでありつつもちょっと奇抜な動きをテーマにステファンコーチに振り付けていただいたので、その世界観を表現することが目標です」(島田)

 冒頭の4回転サルコウは着氷したもののオーバーターン、4回転トウループを予定していた次のジャンプは2回転になる。しかしその後は二つのトリプルアクセルからのコンビネーションを含むすべてのジャンプを着氷させ、演技をまとめた。時には妖しさも感じさせる独特の雰囲気を醸し出し、164.26というスコアを獲得した島田の最終順位は3位だった。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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