ジャパンオープンで連覇を果たした日本チーム 坂本花織、島田高志郎、友野一希が滑った“挑戦”のプログラム

沢田聡子

新境地を開拓する友野「グランプリに向けて頑張っていきたい」

新しい一面を見てほしいという友野のフリー『Halston』 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 日本チーム最後の滑走者となった友野のフリー『Halston』(ミーシャ・ジー氏振付)は、今までの“踊れる”スケーターという印象とは異なる静かなピアノ曲を使う。友野自身が難しいものにしてほしいとジー氏に頼んだ、挑戦のプログラムだ。

 前日の公式練習後、友野は「新しい僕の一面というか、そういう表現を見ていただけたら」とこのフリーについて説明している。「自分がやりたかったような曲」とも話し、自ら新境地の開拓を望んだことをうかがわせた。

「今まで自分が挑戦したことのないような曲調なので、しっかり体のラインやボディコントロールを見せられればいいなと思うし、曲はその時によって感じるものをそのまま表現できたらいいなと」(友野)

 5番目にリンクに入った友野の黒いコスチュームはシンプルかつスタイリッシュで、使用曲のイメージを表しているようだ。4回転を3本着氷させて好スタートを切り、後半ではトリプルアクセルを2本降りる。淡々と続く曲調でも後半に向かうにつれて熱量が上がっていく友野の良さは生きており、ここ数シーズンで伸びやかさを増したスケーティングでも魅了した。

 友野の点数は177.72(最終順位は2位)で、4人のスコアの合計が614.79となった日本チームが優勝している。記者会見に臨んだ4人の表情は、晴れやかだった。

 昨年に続き1位だった坂本は「今自分ができる精一杯を出し切れたので、今日の演技には満足しています」と充実感を漂わせつつ、課題も見据えた。

「これからどんどん振付やスピンなど細かい部分をブラッシュアップして、150点を超えられるようにしたいなと思っています」(坂本)

 島田は「今シーズンのフリープログラムは、自分への挑戦」と口にした。

「今日の演技だと『お客さんの心が感動で震える』というところまでは、全く及んでいないなと感じたので。自分にしか出せない特別な世界観を大事に、さらに滑り込んでいって、いつかは心が震えるような演技がしたいなと思っています。今シーズンはそれを目指して、まずは練習をしっかり積み、頑張っていきたい」(島田)

 また、友野は「現状の演技には納得していなくて」と語っている。

「一つひとつのポジションや体の使い方、力の抜け具合、ボディコントロール、まだまだ改善するところがあって。今日は本当に落ち着いてまとまったいい演技ができましたが、心から(湧き上がって)くるようなものは自分の中でまだ感じられていないなと。多分、そういう練習がまだできていないと思っている。ジャンプだけではなくて、表現の細かい部分までしっかり練習していかないと『ちょっとやばいな』という危機感があります。グランプリに向けて、しっかり気持ちを切り替えて頑張っていきたいなと思います」(友野)

 グランプリシリーズは、10月20日から始まる。10月7日にさいたまスーパーアリーナで演じられた3つのプログラムは、シーズンを通して深みを増していくはずだ。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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