一芸に秀でた独立リーグのドラフト候補投手たち 「剛速球or高身長or若さ」が指名されるための必要条件

金沢慧

157キロをマークした大谷輝龍はGCSでどのような投球を見せるか

 IBLJのような詳細なデータはないが、報道ベースの球速から他のリーグの投手もリストアップしてみよう。

 まずは157キロをマークした富山の大谷輝龍。今年から石川と富山の2チームでリーグ戦を行っている日本海リーグ(NLB)で注目を集めている。9月19日に行われた西武3軍とのNPB交流戦でも156キロをマーク。球速がドラフト候補の中でも屈指なだけに指名がありそうだ。富山は他にも150キロを超える投手が多く、特に松原快(登録名は「快」)と日渡柊太は注目したい。日本海リーグ初代チャンピオンとしてGCSにも参戦するので、彼らがどのような投球を見せるか楽しみだ。

 ヤマエグループ九州アジアリーグ(KAL)では北九州下関の左腕・大江海透が8月27日の大分戦で153キロを記録した。リーグの防御率1位を獲得するなど成績も抜群で、ドラフトで名前が呼ばれる可能性はある。

 ルートインBCリーグ(BCL)では土生翔太(茨城)が第一候補だ。横浜高校から桜美林大を経て1年目、181センチの右腕で最速は154キロとの情報。9月15日に行われたBCL選抜と巨人3軍の試合でも最速152キロをマークして好投した。その他、過去に154キロを出している栃木の左腕・入江空も150キロ台の速球が戻ってきており、リストアップしている球団はあるだろう。

193センチ左腕のシンクレアは希少性が高い

【公式記録等から筆者作成】

 次に高身長の投手をピックアップするため、IPBL所属5リーグの25歳以下、投球回20以上の投手を身長順に並べた。

 一押しは徳島の長身左腕・シンクレアジョセフ孝ノ助(登録名は「シンクレア」)だ。今シーズン途中に徳島に加入すると、最高球速149キロをマーク。27イニングを投げて防御率0.67の成績を残し、特にソフトバンク3軍との交流戦では12打数0安打と完璧に封じていた。カナダ育ちだが、母親が日本人で日本国籍がある。実戦向きの大型左腕は数が少ないだけに、各球団がドラフト指名のシミュレーションを繰り返すうちに順位が上がってくるはずで、予想より上の順位で指名されることもあるだろう。

 昨秋に肘のクリーニング手術を受け、今シーズン終盤に復活してきた玉置隼翔(愛媛)、BCL選抜に選ばれている増子航海(神奈川)、またこの表には入らなかったが、185センチの芦田丈飛(埼玉)も最速152キロの速球が高い評価を得ており注目だ。

151キロの山崎正義、150キロの菊田翔友はまだまだ伸び盛り

【公式記録等から筆者作成】

 20歳以下の投手に目を移すと、昨夏の甲子園で愛工大名電の主軸として活躍した山田空暉(愛媛)の名前が目立つ。ただ、今季の最高球速は148キロ、坊っちゃんスタジアムでのストレート平均球速は143キロとまだ球速が足りていない。

 一方で、享栄高校から入団して2年目の菊田翔友(愛媛)は最速150キロ、坊っちゃんスタジアムでのストレート平均球速が147キロと成長した姿を見せている。同じく高卒2年目の山崎正義(徳島)は今年チームのクローザーを務めており、最高球速は151キロ。彼らはまだ伸び代も大きいだけに、各球団からの注目度は高い。

独立リーグを代表するサブマリン・下川隼佑の指名に期待

 過去5年の19人のNPBドラフト指名投手の中で唯一3つの基準をどれもクリアしていなかったのはサイドスローの畝章真だった。各球団、変速投手は別の基準でリストアップされているはずだが、今年その名簿に上がるのは下川隼佑(新潟)、村上航(茨城)、松下勇輝(香川)あたりだろう。

 特にサブマリンの下川は106イニングを投げて103個の三振を奪っており、昨年に比べて成績が向上した。9月15日の巨人戦でも1回を5球に抑えるなど、注目度は高い。NPBで絶滅危惧種となっているアンダースローの文化をつなぐ存在になれるか。

 また、左腕では松江優作(火の国)や山本麗貴(士別)など、球速は最速でも140キロ前半だが各リーグで活躍している投手をスカウトがどう評価するかも気になるところだ。
 以上、過去の指名傾向に基づき有力投手をリストアップした。ここまで見てきた通り、今年の独立リーグには支配下を狙える投手が複数いる。彼らは今週末に松山の坊っちゃんスタジアムで行われるGCSでも登板するはずなので、ぜひ現地やライブ配信で実際に投球を見てほしい。坊っちゃんスタジアムは球速の出やすい球場なので、最高球速を更新しスカウトに大きくアピールする投手が出てくるはずだ。

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著者プロフィール

1984年生まれ、福島県出身。学習院大学在学中の2005年夏の甲子園で阪神園芸での整備員アルバイトを経験するなど、基本的には高校野球マニア。 筑波大学大学院体育研究科を修了後、2009年にデータスタジアム株式会社に入社し野球のアナリストとして活動を始めた。NHK-BSで放送されている「球辞苑」には2015年から出演している。2018年からは本所属を株式会社リクルートテクノロジーズ(現・株式会社リクルート)のデータ利活用の部署に移し、主にHRメディアでのデータ分析環境の整備や機械学習を用いたアプリケーション開発のPMOとして従事した。 2022年10月に独立し、現在は四国アイランドリーグplusのアナリティクスディレクターなどプロスポーツリーグ等でのHR領域のデータ活用推進を行っている。また、スポーツアナリティクスジャパン(SAJ)2022ではプロジェクトマネージャーを担うなど、スポーツをきっかけとした文化交流のカンファレンスやイベントの企画、運営にも携わっている。

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