プロ野球2023シーズン終盤戦の12球団見どころ

「アレ」へ一直線、セ界に敵なしの岡田阪神 日本一への“不足分”を補って悪夢を払拭できるか

三和直樹

四球増と終盤戦で期待の2人

今季の交流戦ではオリックスに甲子園で1勝2敗と負け越した。日本シリーズでの対戦はあるのか 【写真は共同】

 投手陣の盤石ぶりが光るが、それはシーズン3位に終わった昨季も同じだった。事実、今季のチーム防御率2.67(先発防御率2.88、救援防御率2.20)は、現時点で昨季のチーム防御率2.67(先発防御率2.81、救援防御率2.39)と同じだ。そう考えると「勝てる理由」は打線にある。

 とはいえ、打線も今季のチーム打率.248は昨季の打率.243と大差なく、69本塁打と66盗塁も残り19試合で昨季成績(84本塁打、110盗塁)で上回ることは難しい。その中で明確に増加しているのが四球数だ。昨季は143試合で358四球だったが、今季は124試合の時点ですでに443四球を選んでいる。それによってチーム出塁率が、昨季の.301から今季は.324と上昇している。

 その出塁率が最もアップしたのが4番の大山悠輔である。昨季の打率.267、23本塁打、87打点から、今季は打率.286、14本塁打、66打点という中で、四球数を現時点で59から88に増やして出塁率を.358から.402にアップさせている。リーグトップの宮﨑敏郎(出塁率.403)とは僅差であり、タイトル獲得のチャンスが大いにある。

 そして今後の戦いで期待したいのが、ルーキーの森下翔太と佐藤輝明の2人だ。夏場以降、印象的な一打、アーチを放ってきた森下は、9月の6試合を打率.346、4本塁打、5打点。前半戦を打率.214、10本塁打、42打点で終えた佐藤は、8月に月間打率.300、3本塁打、16打点と調子を上げると、9月は7試合で打率.346、3本塁打、9打点。このドラ1コンビが、ポストシーズンでのキーマンになりそうだ。

日本一へ向けて足りないもの

 リーグ優勝は間違いなく、甲子園の大声援を背にしたCS舞台でも有利に戦える。だが、日本一へ向けては越えなければならない壁がある。“お隣さん”であるオリックスだ。

 ともに盤石の投手陣が強みのチームであるが、オリックスがリーグ連覇を果たしていることもあって、特に先発陣の実績、経験は相手が上回る。今年の交流戦での対戦時も、本拠地・甲子園が舞台でありながら、初戦で村上が山本由伸に投げ負ける形で0対2の完封負け。第2戦は相手先発・曽谷龍平の乱調によって8対2で勝利したが、第3戦は最終回に湯浅が頓宮裕真、杉本裕太郎に被弾して2対3の逆転負けを喫した。

 もちろんまだ日本シリーズのカードは決まっていない。それでも対戦を想定した場合、阪神打線がオリックス投手陣から何点取れるのか。投手戦になって際に投げ勝てるのか。武器が同じの「同型」のチームが対戦した場合、持っている武器そのものの性能が勝敗を分ける。先発3本柱の経験値を比べると、阪神としては分が悪い。

 そして、気になるのが代打成功率の低さだ。今季の代打率.174(195打数34安打)はリーグワーストの数字。原口文仁が2本塁打を放ってはいるが代打率.186と確率が低く、糸原健斗も代打率.195と低迷。渡邉諒(代打率.128)、ミエセス(代打率.111)も振るわない。レギュラーシーズンの中ではそれほど問題にならなかったが、短期決戦の中では“代打の切り札”が是非とも欲しい。また、これは今季のオリックスにも当てはまるが、早い時期から独走を続けたことで、いわゆる「天王山」、「絶対に負けられない」という緊迫した試合を経験していない。このことがポストシーズンでマイナスに働く可能性がある。

 18年ぶりのリーグ優勝で、間違いなく盛り上がる。だが、そこで立ち止まってはならない。阪神には2008年のV逸に加えて、05年の日本シリーズ4戦合計「4対33」の苦い思い出がある。あの悪夢を払拭してこそ、真の喜びがある。日本一となって大団円を迎えられるか。「アレ」の答えはどこにあるのか。岡田彰布監督の手腕に期待したい。

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著者プロフィール

1979年1月1日生まれ。大阪府出身。学生時代からサッカー&近鉄ファン一筋。大学卒業後、スポーツ紙記者として、野球、サッカーを中心に、ラグビー、マラソンなど様々な競技を取材。野球専門誌『Baseball Times』の編集兼ライターを経て、現在はフリーランスとして、プロ野球、高校野球、サッカーなど幅広く執筆している。

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