プロ野球2023シーズン終盤戦の12球団見どころ

リーグ連覇後に苦悩のシーズンを過ごす高津ヤクルト 若手の成長を促して再飛躍への準備を進めたい

三和直樹

成長期待の若手野手陣たち

2軍で17本塁打と”無双”した大卒ルーキーの澤井廉。プロ初安打の次はプロ初アーチに期待だ 【写真は共同】

 自慢のはずの打線では、村上宗隆、山田哲人の主軸2人の不振と、核弾頭・塩見泰隆の出遅れが痛かった。サンタナ、オスナの両助っ人野手は奮闘しているが、打線の核だった日本人打者3人が揃って快音を響かせてこそ、強力打線が機能する。9月以降、彼らの復調をもちろん期待したいが、現在の順位を考えると、投手陣同様に野手陣も来季を見据えた戦い、選手起用にシフトチェンジしていい。

 ただ、すでにシーズン序盤から若手が積極的に起用されており、21歳の長岡秀樹、22歳の武岡龍世の高卒生え抜きの「長武コンビ」は華麗な守備を披露し、新時代到来を印象付けている。長岡が打率.220、武岡が打率.224とともに打率2割2分台のバッティングをここからどこまで高められるか。大卒2年目外野手の丸山和郁も含めて、若手野手の成長には大いに期待したい。

 さらに注目したいのが、大卒ルーキー外野手の澤井廉だ。豪快なスイングを武器に、イースタンではここまで72試合に出場して打率.271、17本塁打、46打点をマーク(9月1日時点)。本塁打は断トツのトップを誇っている。1軍ではスタメン5試合を含む11試合に出場して20打数2安打と壁にぶつかっているが、出場数を増やして1軍投手陣の投げるボールに慣れれば持ち前の長打力を発揮できるはず。1軍舞台でのプロ初安打の次はプロ初アーチに期待したい。

タイトル獲得に期待し、再飛躍への準備を

 改めてチーム全体を見ると、昨季三冠王の村上が打率.252、24本塁打、70打点で無冠が濃厚な中、マルティネス(中日)と並んでリーグトップタイの29セーブを挙げている田口麗斗、島内颯太郎(広島)と1差のリーグ2位の35ホールドポイントの清水昇の2人にタイトル獲得のチャンスがある。まずは彼らの頑張りに期待したい。

 昨季限りで3年契約が終了し、新たに2年契約を結んでの1年目だった高津臣吾監督に関しては、すでに8月25日に来季続投が発表されている。もちろん可能性のある限りAクラス入りを目指すべきだが、現時点で3位・DeNAとは12.5ゲーム差を付けられており、現実的ではない。それよりもしっかりと地に足を付けた状態で、主軸の復調と若手の成長、そして新戦力の発掘に励みたい。

 リーグ連覇の後のBクラス低迷を、再飛躍への糧にできるかどうか。来季の巻き返しへ向けて、今季の残りシーズンを選手個々が無駄にしてはならない。

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著者プロフィール

1979年1月1日生まれ。大阪府出身。学生時代からサッカー&近鉄ファン一筋。大学卒業後、スポーツ紙記者として、野球、サッカーを中心に、ラグビー、マラソンなど様々な競技を取材。野球専門誌『Baseball Times』の編集兼ライターを経て、現在はフリーランスとして、プロ野球、高校野球、サッカーなど幅広く執筆している。

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