3週間後に迫ったバスケW杯 脱落あと3人の生存競争、最激戦区はウイング陣

永塚和志

ウイング陣のポジション争いは激化不可避

ポジション争いが最も激しいウイング陣の選考争いを難しくしているのが西田優大(左)と原修太(右) 【Photo by Getty Images】

 日本はこれからニュージーランド、アンゴラ、スロベニア、フランスとワールドカップに出場する国々との強化試合に入っていく。富樫は、「ワールドカップで対戦するレベル(日本は予選ラウンドでドイツ、フィンランド、オーストラリアと対戦)はまた別格で、強化試合での出来が選考に影響するとしたらこれまで当たってきたアジアのチームとの試合以上に、ここからの出来がより重要になってくる」と話している。

 一つ確実に言えることは、選考が選手の実力順で行われるわけではないということだ。ホーバスHCはことあるごとに「パズルのピースを探している」と話してきた。彼の目指すバスケットボールという全体の「画」にはまる選手こそが、選ばれる。吉井や井上、須田といった面々は、失礼ながら所属チームの絶対的エースというわけではない。それでも招集され続けてきたのは、彼らが同指揮官の描こうとしている画にはまるピースになりうると考えられたからだ。

 ポジション争いが最も激しいウイング陣に話を戻せば、比江島と富永という得点力はあるもののディフェンスに難のある選手を2名残すのかどうか、ドライブの力の高い比江島を外せるのかどうか…。

 椅子の取り合いをますます難しくしているのが、西田と原だ。韓国戦でディフェンスとトランジションオフェンスで、富樫や河村とは違う良さを示した西田が「第3のPG」になるのが確実視され、となるとウイングの枠が1つ空いたことにもなる。いや、ホーバスHCがウイングでの人員をできるだけ多くしておきたいがために西田をPGにした、と考えられなくもない。

 そして、原だ。ホーバスHC体制になって最初の代表候補合宿に招集されて以降、そこに縁のなかった男は、昨季Bリーグでベストディフェンダーとベストファイブに選出されるなど大きく成長したことで再招集となった。同リーグではPGからPFまで守ることのできる体の強さと技量を持ち合わせる29歳は、ここまでの強化試合でもその真価を発揮し、オフェンス面でも3Pを高確率で決めている。ホーバスHCは原をワールドカップ初戦で対戦するドイツのエースPG、デニス・シュルーダー(レイカーズ)対策として考えていることを示唆しており、選出は現実味を帯びてきている。

 このように、選考がどのように推移していくかを考えても、改めて難しさを感じる。今、残っている15人はすでに厳しい競争を勝ち抜いてきた者たちだけに、ここからさらにどの3人がリストから漏れることになるのか、予想は容易ではない。

「正直、今まで感じたことがないプレッシャーやストレスを感じています」

 現状の代表候補で最年長の比江島慎(宇都宮ブレックス)は、ほがらかな口調の中に穏やかならぬ心境を吐露する。中核選手が一定程度決まっているところからチームを強化していく前任のフリオ・ラマスHC体制時とは違って、選手間の競争を求めるホーバスHCのチームでは「気が抜けない」(比江島)と口にしている。

 個々の技量もさることながら、ホーバスHCが常々、選手たちに強調してきたのが自分たちのやっているバスケットボールを100%のコミットメントを示しながらやれるかどうか。つまりは精神的な強さだ。世界の強豪を相手に少しでもそこを疑う気持ちがあれば、求める結果など到底、手にできないからだ。

 ワールドカップ・アジア地区予選の全日程を終えた後、同HCはこう語っている。

「就任からの1年半、日本代表の文化を変えたいと思ってやってきましたし、ハングリーで自分たちがやっていることを信じられる選手たちを招集してきました。それは達成できたと思っています。だからもはやそこに対しての心配はありません」

 ハングリーで自分たちを信じている選手たちが、残りわずかな合宿と強化試合を通してさらに激しいバトルを繰り広げていく。

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著者プロフィール

茨城県生まれ、北海道育ち。英字紙「ジャパンタイムズ」元記者で、プロ野球やバスケットボール等を担当。現在はフリーランスライターとして活動。日本シリーズやWBC、バスケットボール世界選手権、NFL・スーパーボウルなどの取材経験がある

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