井上尚弥、さらなる高みへ スーパーバンタム級挑戦編

井上vs.フルトン 井上陣営レポート 「チーム」で共有される充実ぶり

本間暁
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階級を上げての初戦となるが、調整は順調に進んでいる 【写真は共同】

 決戦まで3週間となる7月上旬。大橋秀行会長、八重樫東トレーナーを取材するためにジムを訪れた筆者は、その流れで井上尚弥のトレーニングに偶然立ち会うことができた。スパーリングを含めたその模様、チームを担う両名の証言を交えながら、大一番に臨む“モンスター”の状況を探る。

「過去イチです!」と笑顔のサムズアップ

 ジム入りしてから3時間近くが経過していた。猛烈に集中したトレーニングが終わり、入念にストレッチも重ねた井上尚弥は、うつ伏せのまま、リラックスした状態でスマートフォンをチェックしていた。常人には飛び込めない炎の壁が収束したことを確認し、そろりそろりと近づくと、こちらの気配を察知して、ふと顔を上げた彼は、まるでいたずらを見つかった少年のようににっこりと笑った。

「スパーリング、またまた凄いものを見せていただきました。順調ですね」。そう感想を述べると、「過去イチです!」と即答し、右手の親指を力強くさわやかに突き立てた。

 試合まで3週間時点。通常、ひと月を切るころから体重調整、つまりは減量に入っており、疲労も相まって当然動きが落ちてもおかしくない時期のこと。しかも、空腹状態は一般の人間でさえも苛々が募るものだが、そんな様子はつゆほども感じられない。

 過去一番の出来。それは決して強がりでもなんでもなく、紛れもない事実だった。3月に続き、長期滞在してパートナーを務めるふたりの無敗メキシカン、ブライアン・アコスタ(24歳)とセサール・ヴァカ・エスピノサ(21歳)を相手に、それぞれ4ラウンド行ったスパーリングは限りなくパーフェクトに近いものだった。
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著者プロフィール

1972年生まれ。埼玉県出身。『ワールド・ボクシング』(日本スポーツ出版社)、『ボクシング・マガジン』(ベースボール・マガジン社=2022年7月休刊)編集記者を経て、現在はフリーのボクシング記者として、『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)等に寄稿。個人note、Twitter(@bjakira2004)にボクシング批評等掲載。

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