バスケW杯に向けて台頭が期待される新戦力 「U22世代」の富永啓生、金近廉が見せる成長と理由
金近は「練習生」として弱点克服に取り組む
金近は2月のW杯予選で代表デビューを飾り、大活躍を見せた 【写真は共同】
「すぐBリーグに出て活躍できるとは思っていないので、準備期間としてすごくいい時間だった。トレーニングに関しては、全体的なベースのアップもしましたけど、自分が弱いところを改善できるようにやってもらっていました」
試合はそれ自体が大切なトレーニングだが、戦術の理解と定着には時間が必要だ。チームが出来上がったシーズン終盤に合流しても、適応はなかなか難しい。20歳としてみればフィジカル、スキルともレベルの高い金近だが富永と同様にまだ“仕込み”は必要だった。
具体的には「お尻がうまく使えていなかったり、肩があまり安定しなかったり」という課題があった。彼は千葉ジェッツのトレーナーが組んだ個別プログラムにしたがって、身体の動作、操作の改善に取り組んだ。筋力などの数値も、千葉合流後に上がっているという。チームの登録は「196センチ・84キロ」だが、本日のコメントによると現在95キロ。ちなみに2月のイラン戦の時には「91キロ」と口にしていたので、4カ月で4キロ体重が増えた。
試合に登録できない立場だったが、チャンピオンシップに向けたチームとトレーニングをともにした。今村佳太(琉球ゴールデンキングス)や安藤周人(アルバルク東京)のような仮想相手チームのエース役を務めたこともあった。彼はこう振り返る。
「動画を練習前に全員で見てからやるので、イメージしながらやりました。完全な真似はできないですけど、それぞれに特徴があってすごいプレーをされているので、しっかり自分も見習ってやっていかないとなと(考えた)」
競争から抜け出すために
「メンバー的には一番厳しい狭き門で、そこは自分も理解しているつもりです。でもここに懸けてこの2、3カ月やってきているので、本当にそこ(W杯メンバー入り)を何としてもつかみたい。サイズ的には(ウイングで)一番で、吉井(裕鷹)さんと同じですが、相手には2メートルある、それを超える選手が2番(SG)や3番(SF)にいる。自分はディフェンスや、オフェンスも上から打てるところがあるので、そういうアドバンテージを生かしたい。あとリバウンドが日本は弱いので、そこで自分が外から絡むだけで変わってくると思う」
金近は両親が揃ってバレーボールの選手で、父・潤さんはVリーグ「NTT西日本レグルス」でもプレーしていた183センチのレフトプレーヤー。FIVBネーションズリーグで快進撃を見せるバレーボール男子日本代表については「競技が違いますけど、刺激というか、日本のバスケットもそうなればいいと思います」と口にしていた。
日本代表は7月8日のチャイニーズ・タイペイ戦を皮切りに、大会直前の8月19日に開催されるスロベニア戦まで、計9試合の公開の強化試合を組んでいる。2カ月という期間と9回の国際試合はチーム、特に若手選手が「化ける」ためには十分なボリュームだ。
W杯は2024年に開催されるパリ五輪の予選も兼ねていて、突破の条件はアジア勢最高成績。日本が目標を達成できるかどうかは富永、金近のような“成長期”にある選手たちがどれだけ伸びるかに懸かっている。