“あのエラー”で知った野球の怖さ 失意のセンバツから報徳学園・岩本は再び立ち上がる
岩本は1年秋からレギュラーで、俊足で何度もチームの窮地を救ってきた。幼い頃から走る競技は負けたことがなかったという 【写真は共同】
1年秋から背番号7をつけ、出塁すれば足で相手をかき回す。昨秋の公式戦では3割を超える打率を残し、盗塁も8個(12試合)決めている。
ただ、準優勝した今春のセンバツに触れると「あまり良い思い出がないです」と苦笑いを浮かべる。伊丹ヤングに所属した中学時代は、タイガースカップで優勝を経験しており「甲子園には良い思い出しかなかった」というが、この春は目の前に広がる景色が少し違っていた。
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兄の絶妙な視点が成長を促す
武器の俊足を生かし、上級生の中でも存在感を示してきた。ただ、下級生時の自分は未熟だった部分も多かったと振り返る。
「1年生の時から足は負ける気はしなかったんですけれど、2年生の春くらいまでは“ただ速い”だけでした。お兄ちゃんに“三塁の回り方がヘタ”とか、はっきり指摘してもらって、このままではいけないと思いました」
高校ではレギュラーではなかった兄。だからこそ、外から見る自分への視点が絶妙だった。
このセンバツでも、試合が終われば指摘やアドバイスをしてくれた。
「技術的にどうこうというより、打席に立った時の表情とか……。自分の悪い部分をちゃんと見てくれて、もっと視野を広く、とか、心構えとか。そういう問題についていろんなことを言ってくれました」
初戦(2回戦)の健大高崎戦は無安打。3回戦の東邦戦では2安打を放ったが、周りが見えていなかったと振り返る。
「ピッチャーばかりを見ていたし、“俺が俺が”って、気持ちだけが前に出ていました」
試合が終わるたびに兄からの助言ももらったが、大舞台に立つとどうしても気持ちが前のめりになってしまう。
実は今年に入って、バッティングフォームを少し変えたことも思うような当たりが出ない一因だった。
「秋は打てていたけれど、この春はバットが振れなくなってしまって」
納得のいく1本がなかなか打てないまま、迎えた準々決勝の仙台育英戦。
「今でも時々言われることがあります」と話す、“あの場面”だ。