井端・西尾のドラフト対談(4月編)

スイングが良くなった矢澤や、即戦力投手たちの評価は? 井端弘和がルーキーたちの現状を診断

Timely!編集部
 NTT東日本のコーチであり、侍ジャパンU12監督も務める球界屈指のアマチュア野球ウオッチャーでもある井端弘和さん。そしてアマチュア野球を年間300試合以上観戦し、ドラフト中継番組では解説も務める野球ライター・西尾典文さん。このお二人が「ドラフト注目選手」をテーマに今年も対談!

 今回は、昨年のドラフト前に行った対談のなかで、お二人が名前を挙げて評価した選手達のプロ入り後の現状、評価について、たっぷり語っていただきました。
(編集注:収録日は4月10日)

プロでスイングが良くなった矢澤、期待通りの吉村

期待通りの活躍を見せている吉村貢司郎(ヤクルト) 【写真は共同】

西尾 昨年のドラフト前に井端さんと対談させて頂きましたが、そのときに名前の挙がった選手達が開幕してポツポツと1軍の試合に出場してきています。ルーキーたちの活躍をどのように見ていますか?

井端 活躍が目立つ選手は日本ハムの矢澤(宏太)選手ですね。(プロのレベルに)対応しているなって思いました。どういうふうに、ピッチャーもやりながら野手もやるのかなと思ったんですけど、比重は野手の方が高いですよね。しっかり振れるし、足もあります。肩も強いですし、1番打者としてずっと使っていって欲しいなと思いますよね。新庄(剛志)監督が好むような選手ですよね。ピッチャーの方はもうちょっと時間をかけていくのかなと思うんですけどね。

西尾 大学の時はピッチャーの比重も高かったですが、プロ入り後は野手の比重が大きくなって、思っていたよりもプロのボールを打てていますよね。

井端 スイングが良くなりましたよね。今まではどちらかというと、ちょっと大振り気味のスイングだったんですけど、今はしっかりと長く振れていますし、体も芯が一回り強くなった気がしますね。

西尾 もともと体も強くて足も凄かったですし、去年のドライチ組だと一番目立っているかなと思いますね。ピッチャーだとヤクルトの吉村(貢司郎)投手が、期待通りというか「これくらいはやってくれないと」というのはチームとしてもあると思いますけど。

井端 ずっと安定していますよね。シーズン的に言ったら、高校や大学生に比べてしっかりと社会人は試合をやっていますので、ある程度、一年間を任せられるのかなと思うので。悪いなりにも抑える技術というか投球は見せられると思うので、ある程度怪我なくやればヤクルトの打線に助けられるのでは。そうは言っても、まだ今シーズンなかなか助けてもらえてないので勝ててないですけど(笑)。でも今みたいなピッチングをしていけば二桁勝利は固いんじゃないかと思います。

西尾 日本ハムの金村(尚真)投手も先発で結構良かったですよね。

井端 ちょっと立ち上がりが危ない場面もありましたけど、でも要所を締めてから安定したピッチングでしたので、ローテーションに入ってくるかなと思いますね。
(編集部注:対談終了後の4/19に右肩を痛めて登録抹消)

西尾 富士大学の時代は、チームの大エースだったのでリーグ戦とかはちょっと抜いて投げているようにも感じたのですが、でもプロに入ってちゃんと間隔を空けて投げると、ボールが強いんだなと思って見ていました。やっぱりコントロールが良いですね。

林のショートは及第点、門脇は「状況に応じた打撃」を

状況に応じた打撃ができれば「もっと良い選手になる」と井端さんが期待する門脇誠(巨人) 【写真は共同】

西尾 野手では阪神の森下(翔太)選手は開幕から結構使われていましたね。

井端 彼も「振れる」じゃないですか?

西尾 そうですね。去年の対談でも井端さんはまさにそこをおっしゃっていましたね。

井端 「振れる」というところと、そこに対しての「対応」ですよね。オープン戦、シーズン開幕直後って、相手投手も「どんなバッターなんだ?」という感じで投げてきて、それでここが強い、ここが弱いというのが多少出てきたら、ある程度徹底して(攻めて)くる。バッターはそれを意識する。というのが流れ的にあるので、そこをどう対応するのかは森下選手次第ですよね。

 意識してそこを打つのか、そこは放ったらかしにするのか、ですよね。僕の場合は放ったらかしにした方だったので、「いつか打とう」と思っていました。そこを徹底して(攻めて)くるといっても、そこに全球くるわけじゃないから「違うボールが来たら打とう」くらいにしか思っていなかったですから。

西尾 なるほど。

井端 でも将来的には主軸を張るような選手かなと思いますよね。
(編集部注:4月17日に二軍降格)

西尾 他に一軍で使われている選手だと、巨人の門脇(誠)選手、DeNAの林(琢真)選手とか、内野手の選手ですね。

井端 林選手は、序盤にヒットが出ていなくて苦しんでいるのかなと思ったんですけど、オープン戦の終盤は毎試合結果を出していましたよね。ヒットはいずれ出てくるようになると思いますけど、打てていなくてもずっと使われているっていうことは、ベイスターズの(林選手を)育てようという感もあるので、選手としてはやりやすいのかなと思います。でもやっぱり塁に出ないと彼の一番の特徴の足が生きないですよね。
(編集部注:4/11のヤクルト戦で初ヒットを記録)

西尾 そうですね。

井端 サードをやったりショートをやったり、コロコロ変わっていますけど、ほぼほぼショートに固定されていくと思いますけどね。

西尾 去年の対談でも井端さんがまさに「林選手はショートもできるんじゃないか」ってお話されていましたけど、ショートの動きは、実際に見ていかがですか? そんなに違和感ないですか?

井端 まだまだ完全にショートの動きではないですけど、キャンプ、オープン戦とそんなにショートの練習していないんだろうなって思うんです。(もともと)セカンドをやっていて、サードもやったりして、そのなかでシーズンに入ってパッとショートを守っているというなかでは、よくやっていると思いますよね。

西尾 うんうん。

井端 僕も(大学時代は)セカンドをやっていて、プロに入って「ショート」と言われて二軍であたふたしたので。それを林選手は1軍でパッとショートをやれているのは凄いと思って見てますけどね。

西尾 巨人の門脇選手はどうですか? 坂本(勇人)選手が開幕から調子が悪いのもあって結構使われていましたけど。

井端 振る力はあるなというのは、キャンプを見ていても思っていました。ただ試合ではまだそこまで振れていない感じがしますね。試合でも「練習よりも振れる」感じになってきたときには打撃も上がってくると思います。守りの部分では、セカンドもショートも両方できるようにしておくのが、試合に出る上では一番大事かなと思います。

西尾 この対談の前日の試合(4月9日)はセカンドで最初は出ていましたね。高校も大学も始めはセカンドをやっていたので、やれないことはないと思いますけどね。

井端 そうですね。あとは(打撃スタイル的に)どんどんいくタイプだと思うんですけど、状況に応じて「ん?」っていうバッティングをしちゃうことがあるんですよね。「そこはいっちゃダメでしょ!?」っていうところがあるんですよ。

西尾 あー、なるほど。

井端 でも新人なのでね、そこは覚えていくしかないと思いますし、アマチュア時代に主軸を打っていたバッターっていうのは、どんどんいっちゃうっていうのはあると思うんです。いきなりクリーンナップを打つわけじゃないので、そういうのを覚えて状況を把握した上でバッティングをしていけるようになればね、もっと良い選手になると思いますけどね。

西尾 オープン戦ではなかなか結果が出なかった西武の蛭間(拓哉)選手も、開幕してから二軍では結構打っているようですね。

井端 そうですね。でも二軍で打っているということは、いま一軍に来ても打てる状況だと思います。意外と僕もそうだったんですけど、二軍の方が打ちづらかったですから。

西尾 そうなんですね。じゃあ井端さんの1年目は二軍ではあんまり?

井端 2割7、8分くらいだったんですけど、2年目も同じくらいでしたね。それが3年目に一軍で3割打たせてもらったんです。(ピッチャーの)ボールはさすがに一軍の方がいいですよね。「次は外だな」って思っていたら、その通りに外のボールが来てくれるんですよね。

西尾 なるほど。

井端 でも二軍だと「次は外だな」って思っていたら、内角の近いところに抜けてきたり、次はストライクが来るだろうと思って待っていてもボールの球が来たりとか。自分が打ちにいこうと思ってもいける状況じゃなくて。

西尾 読みがあんまり通用しないんですね、二軍だと。

井端 だからボールに慣れれば、で一軍もなんとかなるんじゃないかというのはあったんです。

西尾 それは面白い話ですね。

井端 蛭間選手が二軍で打っているというところではチャンスはいくらでもあると思います。あとは一軍でも同じような気持ちの状態でバッターボックスに立てるかだけだと思いますね。

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