“世紀の一戦”を終えた村田諒太が感じた満足感と未練 メンタルトレーニングを経験して得たものは?

村田諒太
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ゴロフキンに敗れても、村田諒太の心は満たされていた 【Photo by Toru Hanai/Getty Images】

村田諒太 プロボクサー引退後、初の著書

「強さとは何か」を追い求めてきたボクサー村田諒太の『世紀の一戦』までの半年間を綴ったドキュメンタリー。
コロナ禍で 7 度の中止・延期という紆余曲折を経て、最強王者ゴロフキンとの対戦に至るまでの心の葛藤、スポーツ心理学者の田中ウルヴェ京さんと半年間にわたって続けてきたメンタルトレーニングの記録、虚栄や装飾のないありのままの村田諒太を綴った一冊から一部を抜粋して公開します。

不思議な声

 試合から一夜明けた4月10日午後、僕は傷だらけの顔で京さんのオフィスを訪ねた。顎は左右非対称に腫れていた。全身に激闘のダメージが残っていたが、試合24時間以内の心の記録は研究データとしても貴重とのことだった。僕自身も記憶が鮮明なうちに京さんに話しておきたいことがあった。

 不思議な体験だった。前夜のゴロフキンとの試合中、いつも観客の声援もほとんど耳に入らない僕が、目の前の相手と戦いながら誰かの声を聞いていた。その声は徐々に被弾が増えてきた試合中盤、自分の頭上の辺りから聞こえてきた。

「おいおい、このままもらったらやばいぞ、お前」
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