タイトル戦延期発表後に高まった「殴りたくない」という感情 村田諒太を救った“心理学のモデル”とは?
ゴロフキン戦の延期発表後には、スパーリングパートナーを「殴りたくない」という思いが沸いてきた 【Photo by Buddhika Weerasinghe/Getty Images】
「強さとは何か」を追い求めてきたボクサー村田諒太の『世紀の一戦』までの半年間を綴ったドキュメンタリー。
コロナ禍で 7 度の中止・延期という紆余曲折を経て、最強王者ゴロフキンとの対戦に至るまでの心の葛藤、スポーツ心理学者の田中ウルヴェ京さんと半年間にわたって続けてきたメンタルトレーニングの記録、虚栄や装飾のないありのままの村田諒太を綴った一冊から一部を抜粋して公開します。
殴りたくない
僕は11月初旬から東京ドームホテルに1人で泊まっていたが、延期が決まって、いったん家族の待つ自宅に戻った。それでも練習の日々には変わりない。ジムワークが休みの日曜日を除く週6日、神楽坂にあるジムに通い続けていた。
延期発表の直後は、こんなことに負けてたまるかという反骨心や、なぜ俺だけが試合できないんだという怒りの感情がパワーとなって、意外に練習を頑張ることができていた。
だが、1週間から10日ほどたち、試合がなくなったという現実が動かしようのない事実としてのしかかってくると、気持ちも沈みがちになる。練習をしていても、全然楽しくなかった。
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