約2年4カ月に及んだブランクに思い悩んだ村田諒太 大変なのは自分だけじゃないと気づいて真っ先に浮かんだ顔は…
【Photo by Sarah Stier/Getty Images】
「強さとは何か」を追い求めてきたボクサー村田諒太の『世紀の一戦』までの半年間を綴ったドキュメンタリー。
コロナ禍で 7 度の中止・延期という紆余曲折を経て、最強王者ゴロフキンとの対戦に至るまでの心の葛藤、スポーツ心理学者の田中ウルヴェ京さんと半年間にわたって続けてきたメンタルトレーニングの記録、虚栄や装飾のないありのままの村田諒太を綴った一冊から一部を抜粋して公開します。
7度目の中止・延期
一瞬、耳を疑うようなニュースが飛び込んできたのは2021年11月29日のことだった。新型コロナウイルスの新たな変異株オミクロンの感染拡大を受け、岸田文雄首相は水際対策の強化を発表した。
このまま試合が流れることになれば、新型コロナウイルス禍が襲った20年以降で都合7度目。ゲンナジー・ゴロフキン戦の発表会見からわずか17日、12月29日の試合までちょうど1カ月となったところで、僕はまたも霧深い森の中に迷い込んでしまった。
興行の準備は着々と進んでいた矢先のことだった。帝拳ジムのスタッフからは、ゴロフキン陣営一行が宿泊する予定となっている東京・紀尾井町のホテルはワンフロア丸々貸し切りで、レストランやエレベーターも含めて一般宿泊客とは一切接触しない「バブル」環境が整えられると聞いていた。
プロモーターの本田明彦会長が、その経費を「4000万円以上」と話しているのも報道で目にしていた。ゴロフキンは試合3週間前の12月8日に来日する予定になっていた。
それだけのコロナ対策を敷くのだから試合も許可されるのではないか、と個人的にはいちるの望みも捨ててはいなかった。海外からの来日はゴロフキン陣営にとどまらない。レフェリー、ジャッジ、立会人などの試合役員も第三国の人たちが務めることになるが、必要な書類なども全て関係各機関に提出済みとのことだった。昼夜を問わずこの試合の準備にあたってくれているジムのスタッフや関係者の方々には本当に頭の下がる思いだった。
だが、政府の発表直後から、舞台裏では関係者が慌ただしく動き回っているのが何となく雰囲気で分かっていた。試合会場やホテルは1日遅れただけでもキャンセル料の額も大きく変わってくる。試合ができなくなった場合の放送権者との調整、チケットやプログラムの印刷、グッズの製作など影響は広範囲に及ぶ。リスクを考えれば、早めの判断は当然のことだと納得せざるを得なかった。
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