2年の時を経てつかんだワールドカップの出場権 U-20日本代表・北野颯太が抱いていた知られざる想い
森山監督との出会いとU-17ワールドカップの中止
待ち焦がれたワールドカップへ。北野は3年間の時を経て世界の舞台に立つ 【Photo by Zhizhao Wu/Getty Images】
「ボロクソに一次予選で言われていました。突破を決めたのに最後の試合後に急遽ミーティングになって、森山佳郎監督にめちゃくちゃキレられたんですよ。めっちゃ喜んでいたのに急に呼ばれて…。『足がつってるようじゃあかん』って言われたんです」
そうした叱責は期待の裏返しだ。世界で戦う選手になるために森山監督は発破をかけたのだが、その助言を理解して体現できるようになるのはもう少し後の話。当時は言葉を飲み込むことしかできなかった。
そんな矢先、2020年の春先に新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、ことごとく大会が中止に。クラブでの活動も制限され、代表チームも身動きが取れなくなった。2020年の秋に開催予定だったU-16アジア選手権は中止となり、21年の秋に予定されていたU-17ワールドカップも実施できず。
「当時はU-17ワールドカップに出場して、U-20ワールドカップにも出る。これが当時の自分が思っていたことなんですよね」
世界を経験し、成長スピードを加速させていく。しかし、描いていた青写真は実現できず、やり場のない悔しさを噛みしめながら日々を過ごした。
3年間の経験を無駄にせず、大一番で全得点に絡む活躍
その結果、全得点に絡む大活躍。左サイドを抉って坂本一彩(岡山)の1点目をアシストし、キレのあるドリブルで中に切れ込んでミドルシュートでGKのファンブルを誘い、FW熊田直紀(FC東京)の得点をお膳立てした。
「得点は欲しい。欲を言えば」と悔しさものぞかせたが、準々決勝で10番としての矜持は示した。また、この日は守備面でも貢献。相手にプレッシャーをかけ続け、森山監督から指摘されていた課題も克服して成長の跡を残した。
この3年はコロナ禍で思うように過ごせなかった。しかし、その時間は決して無駄ではない。ようやく、つかんだ大舞台にチャレンジする権利。アジアNo1を勝ち取り、北野は本大会でもメンバー入りを果たしてさらなる飛躍を誓う。
「結果として無駄じゃなかったというのを見せていきたい」
自らの足で壁を乗り越えてきた10番の挑戦はまだ始まったばかりだ。