カーリング日本選手権で連覇を達成したSC軽井沢クラブ 強さの理由と、良きライバルの存在

竹田聡一郎

底上げのために回り道でも群雄割拠を

準優勝のKiT CURLING CLUB(白)、3位のコンサドーレ(赤黒) 【(C)JCA IDE】

 一方で、古くからの男子カーリングファンには感慨深い大会になった。

 冒頭にあるSC軽井沢クラブの「V10」だが、そのうち2007年からの3連覇、2013年からの5連覇、計8回の優勝は、両角友佑、山口剛史、清水徹郎、両角公佑の2018年平昌五輪代表チームによるものだ。五輪には前述の平田洸介を加えた5選手が出場した。

 平昌五輪後、山口剛史はSC軽井沢クラブに残り、両角友佑と公佑はTMKaruizawaを、平田はKiT CURLING CLUBをそれぞれ立ち上げた。清水徹郎はコンサドーレに加入。5人とも新たな環境を得て強化を続けたが、その5人が平昌五輪以降の日本選手権で初めて同時に4強に進んだ。

 両角友佑はその現状について「良かったと思う」と分析する。

「旧SC(平昌五輪代表当時のSC軽井沢クラブ)の選手が散らばっただけで男子全体が弱くなったんじゃないかという雰囲気もありましたけれど、それぞれのチームが若い選手だったり、実力のある選手を集めて強いチームの数が増えていっている状態。今回の日本選手権に出たチームと、あとは常呂ジュニア(ジュニア日本代表)のようなチームもからんできたりすると、さらに男子のレベルが高くなってくる。いい事ですよね。……でも、そうすると勝つのが大変なので『嫌だなあ』とも思います」

 両角が指摘するように、各チームは時間を費やしながらも次世代の選手、カーリングを続けたくても環境が備わらなかった選手などを集め、好チームに仕上げてきた。残念ながら、北京五輪の出場は叶わなかったが、切磋琢磨しながら男子のレベルはかなり底上げされているはずだ。五輪は出るものから、メダルを獲るものにフェーズが移行しつつある。

 そして今回、優勝したSC軽井沢クラブはそれを、4月にカナダ・オタワで開催される世界選手権で示してくれるだろう。

「狙うところは予選突破、6位以上が現実的。まずプレーオフでの戦い方を実戦で早い段階で経験したい。来年、再来年以降でメダルにからむためにも」(山口)

 2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪の出場枠は、2024年と2025年の世界選手権の結果に左右される。例年どおりであれば、両大会ともに6位以上であればほぼ、出場権を獲得できるだろう。どちらかでメダルにからめば安泰といった感じで、それを見据えた山口の長中期的なプランだろう。

 ただこれは、SC軽井沢クラブだけに限ったことではない。世界のアイスで結果を出したSC軽井沢クラブと互角以上に戦えれば、世界と渡り合えるという他の男子の格好の物差しになるはずだ。

 馴れ合いよりも競い合いを。そう選択した5選手が蒔いた種は発芽し、成長してきた。ミラノ・コルティナダンペツィオまであと3年。さらなる強化のために、激しい国内の覇権争いは続く。

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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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