Bリーグが注力する社会的責任活動「B.LEAGUE Hope(B.Hope)」 水戸にて「そなえてバスケsupported by日本郵便」を実施

震災を知らない世代の反応は?

「そなえてバスケ」のプログラムには篠山竜青(中央)、辻直人(右)が参加した 【写真:永塚和志】

 ディフェンスアクションに続いて行われた「FAST SHOT」は、災害が発生したと想定しながら地震、火災、津波などの災害に応じたアクションを学ぶもの。地震ならばその場でかがんで、目と頭を守る動きをしてからシュートに移るゲームを通して、初期行動を取ることの大切さを学んだ。

 催しの最後にはロボッツスクールの金子結愛さん(小学5年)が参加した子どもたちを代表して「私は東日本大震災が起きた次の年に生まれたので大きな地震や災害はまだ経験していませんが、今回大好きなバスケを通じて防災の知識や災害への理解を楽しみながら知ることができました」と心のこもったメッセージを読み上げた。

 茨城ロボッツのU15ユースチームに所属する小瀬美月さん(中学2年)も同大震災の記憶はほとんどないとのことだったが「近所の人たちともっと挨拶をしたりして災害に備えていきたい」と、今回教わった防災の3要点の1つである「共助」を実践していきたいと語った。

 バスケットボールを通じて防災への理解を深めるプログラムを今回体験した篠山は「ただ机の上で出された問題を覚えるというよりも体の動きがあったほうが覚えられると感じました」と話した。

 エレベーターに乗っている際に災害に遭った場合にはすべての階のボタンを押さねばならないと講話で学んだ辻は、「意外と知らなかった。エレベーターで閉じ込められるリスクもあるし、それを回避できるんだというのが学びになった」と自身にとっても有益な時間になったと述べた。

 多くの参加者が東日本大震災を知らない、あるいは覚えていないながらも、子どもたちだからこそ教わったことが伝播しやすいのではないかと、講師を務めたロボッツスクールの糸井琢麿コーチは期待する。

「(僕らは)バスケットチームですし、1人に伝われば隣のパートナーに伝わります。チームの監督たちからもまた広めていってもらいたいなと思います」(糸井コーチ)

今後も続く「そなえてバスケ」

 今回、このようにしてオールスター開催期間で行われた「そなえてバスケ supported by 日本郵便」。今後、リーグはこのプログラムを全国展開しながらクラブとともに各地域の防災への意識向上を図っていくことを目指し、「そなえてバスケ杯」を開催する。

「そなえてバスケ杯」はB1、B2に分かれクラブ単位で競い、“クラブ防災アクション(ディフェンスアクション)”とファンが受験する“ファン防災アクション「ヤフー防災模試」”で獲得したポイントの合計で優勝を決める。

 前者は各クラブがディフェンス・アクションを試合前やバスケクリニック、スクール等で子どもたちを対象に実施し、その様子をクラブ公式ツイッターアカウントに投稿することでポイントを獲得できる。実施期間は2月1日から4月2日となっている。

 ファン防災アクションは、各クラブのファンがヤフー防災模試を受験(実施期間:3月9日から4月2日)し、獲得した点数に応じてクラブにポイントが付与される。模試はスマホで受験可能。「速習編」、「地震編」、「台風・豪雨編」の3つのエディションから成っており、受験完了後には点数や偏差値が表示されるが、この点数に応じて各クラブにポイントが付与される。各クラブの選手、マスコットらが防災模試の点数を競う企画も開催予定だ。

災害時に大切な「自助」と「共助」

 こうした防災プログラムは、Jリーグでも先んじて実施されている。Bリーグは全国各所にクラブが存在することを生かして、地震をはじめとした災害の危険にさらされることの多い日本全国でスポーツを通じて防災意識を高めつつ地域社会に貢献していく狙いを持っている。

 NBAの「NBA Cares」を筆頭に、世界の主要リーグはB.Hopeと同様に社会貢献に取り組むプログラムに取り組んでいる。ただ災害という点に関して、ボランティア活動や募金といった形での貢献はあっても、「そなえてバスケ supported by 日本郵便」のように災害に対して事前に備える意識の向上を目的としたものはあまり聞いたことがない。

 内閣府の資料によれば、1995年に発生し多くの被害を与えた阪神・淡路大震災では「公助」にあたる救助隊による救出は全体のわずか数パーセントに過ぎず、7割は家族を含む「自助」、3割が隣人等の「共助」によって救出されているということだ。つまり、何か大きな災害が起きた場合は家族や近隣との連携を日常からしておくことこそが被害を最小限にするために肝要だ。

 震災や津波、気候変動の影響による水害など、日本では毎年、甚大な被害を及ぼす災害が起こる。が、いざというときに速やかに、正しく行動取れるか。スポーツというコミュニティに大きな影響力を持つ「ツール」を使ってそこへの意識を高めていくことは意義のあることではないか。

(文=永塚和志/構成=バスケットボールキング編集部)

【写真:永塚和志】

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