京都精華をWC初優勝に導いた2年生ガード・堀内桜花 見る者を魅了する選手から、チームを勝たせる選手へ

永塚和志

念願のウインターカップ初制覇を果たし喜ぶ堀内(左から2番目)ら選手たち 【永塚和志】

 12月28日、ウインターカップ女子決勝が行われ、京都精華学園がウインターカップ初制覇、そしてインターハイとの2冠を果たした。

 夏に疲労骨折が判明し、それまで見せていた華麗なノールックパスは鳴りを潜めていた。選出されていたU16日本代表からも辞退を強いられた。

 プレーぶりを見ていても、おそらく元通りの動きを取り戻せたわけではない。それでも、堀内桜花(2年)は苦しい時期を経て選手として一段階段を上り、京都精華にとって念願のウインターカップ制覇に貢献した。

2年生ながらオールラウンドな活躍でチームをけん引した 【永塚和志】

 昨年のウインターカップでは、独特のテンポから放つアシストパスで1年生ながら話題となった。だが1年経って、そして上述の故障の苦しみを味わって、堀内はよりチームプレーヤーとして成熟を見せた。

 今大会に入るにあたって堀内が意識していたのが得意のオフェンスではなくリバウンドだったと話したのが、一つの証左だ。イゾジェ・ウチェ(3年)や八木悠香(2年)といった得点力とリバウンド力のある中心選手たちが対戦相手から厳しくマークされるなかで、堀内は積極的に走り込んでリバウンドを獲りにいくなどのプレーが目立った。

 決勝戦はそんな彼女の献身ぶりが如実にスタッツに現れた。チームは対戦相手の札幌山の手に対して57-15とリバウンドで圧倒したが、そのうち堀内がつかんだそれは実に17。オフェンスリバウンドは10を数えた(得点は9、アシストは8だった)。昨年のウインターカップでは準優勝に終わり悔しさを味わったが、上述の故障も重なった堀内にとっては、今年のウインターカップ初戴冠は、喜びもひとしおだった。

「去年負けて、自分が今年、ケガをしてしまって、(優勝した)インターハイもチームに貢献できませんでした。だからリバウンドとかで貢献しようと思っていましたし、優勝できてすごく嬉しいです」

 試合中はほとんど表情を変えなかったポーカーフェースの堀内も、試合後は破顔した。
 ただ、ここに至るまでの道程は簡単ではなかった。大きな故障を負い、日本代表の機会まで逃した本当の悔しさは当人にしかわからないところだが、「バスケットボール以外」の理由も重なって、傷心を乗り越えるのに数カ月を要した。

 見かねた山本綱義コーチも、雷を落としたという。

「(堀内には)厳しく言いました。『そんな暗い顔をしてバスケをするならやめろ。自分が活躍できなくてうつむくような人間はだめだ』と。もう、めちゃくちゃ怒りましたし、(彼女も)泣きじゃくってました」

 京都精華の校長でもある山本コーチは、堀内についてそう語った。彼女の才能が非凡であるからこそ、自身の力量だけに頼る選手になってほしくなかった。故障は不運だったが、結果的に堀内は自身のバスケットボールを見つめ直す機会になったのではないか。今回のウインターカップ優勝は彼女が選手として新たな局面に入った大会になったとも言える。

 留学生ながら今年、チームのキャプテンを務めたウチェらチームメートの支えもあって、堀内は立ち直った。けがの功名ではないが、故障を経て「自分がチームにどう貢献しなきゃいけないか」(山本コーチ)がより理解できるようになった。

「それまでは自分のプレーを好きにやって、切り抜けられるものだからもうそれでいいと思っていたんでしょうけど、やっぱり高いレベルに来るとぜんぜん足りないということを私も感じていましたから」

来年は3年生となる堀内、さらなる成長に期待したい 【永塚和志】

 来年は最終学年となる堀内。ウチェら今年の3年生たちが献身的にチームをけん引してくれた姿を見てきただけに、自身もそれを受け継いでいく気持ちだ。

「やっぱりチームを引っ張っていきたいと思っていますし、(自身の)プレーでは、去年はアシスト(を主に)やっていましたが、今年はもっとチームに貢献できるプレーを考えながらやっていたので、来年のチームはまた違うものになりますが、自分がやるべきことを考えながらやっていきたいなと思っています」(堀内)

 見る者を魅了する選手から、チームを勝たせる選手へ――。故障の苦しみと全国制覇の喜びを経験した堀内の今後の成長が、楽しみだ。
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著者プロフィール

茨城県生まれ、北海道育ち。英字紙「ジャパンタイムズ」元記者で、プロ野球やバスケットボール等を担当。現在はフリーランスライターとして活動。日本シリーズやWBC、バスケットボール世界選手権、NFL・スーパーボウルなどの取材経験がある

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