予選から波乱続出の高校サッカー選手権 2冠狙う前橋育英が中心も混戦か

平野貴也

高卒で海外挑戦のFW福田師王ら注目選手も多数

神村学園の福田は、高卒で海外へ挑戦する注目のストライカー 【平野貴也】

 プリンスリーグ九州の覇者で、初のプレミアリーグ昇格を決めた神村学園(鹿児島)も注目選手の多いチームだ。世代最注目FW福田師王(3年、ドイツ1部ボルシアMG内定)、主将のMF大迫塁(3年、C大阪内定)は、プロ内定。夏のインターハイでは、大会直前に主力選手が新型コロナウイルスの陽性判定を受け、力を出し切れずに終わったが、1年生から主力として日本一を目指してきた2人を中心に、悲願の全国制覇に向けて気合いを入れている。

 ここまでに挙げた以外にも来季からJリーグへ進む選手がいる。日大藤沢のFW森重陽介(3年)は、清水に内定。198センチの長身で、センターバックでもプレーできる二刀流の選手だ。関西最強の呼び声もある東山(京都)は、高速アタッカーのMF阪田澪哉(3年)がC大阪に内定。優勝候補の前橋育英と初戦で対戦する日章学園(宮崎)は、中盤で攻守の軸となるMF金川羅(3年)が、J3宮崎に内定している。

■日体大柏と飯塚、激戦区から注目の初出場校

日体大柏の大型FWオウイエ ウイリアム 【平野貴也】

注目の初出場校がいることも、混戦模様に拍車をかける。ともに激戦区を勝ち抜いた日体大柏(千葉)と飯塚(福岡)は、それぞれ県大会の決勝で市立船橋、東福岡と全国優勝経験チームを破って勝ち上がって来た。日体大柏は19年、飯塚は21年にインターハイで全国大会デビューを果たしており、ともに「いつ選手権に出てくるか」と注目されてきた。

日体大柏は、長身FWオウイエ ウイリアム(3年)が柏に内定。体育学校らしくフィジカル能力に秀でた選手が集まる中、提携先の柏レイソルから派遣されているプロ経験者の根引謙介が近代サッカーの要素を採り入れてチームを作っている。飯塚は、中辻喜敬監督が就任した2015年から本格的に強化。昨季まで3年連続で高卒プロ選手を輩出し、今季もU-16日本代表のDF藤井葉大(2年)を筆頭に将来性豊かな選手をそろえる。両チームは、同じブロックに入っており、このヤマの台風の目となる可能性がある 

勝ち上がり、ブラボーと叫び、優勝旗を手にするのは!?

どこが勝ち上がり、誰がヒーローになるのか。今大会で主力となる3年生は、入学直前の2020年始めにコロナ禍が始まり、例年通りの強化が行えずに歩んで来た世代。強豪校でも強化遠征による経験を積めず、例年よりも実力差が縮まる要因になったと考えられる部分があり、例年通りに比較することはできない。また、選手権の行方は、単なる戦力比較では計り知れない。前回大会の準決勝で棄権を余儀なくされたチームがあった新型コロナウイルスはもとより、冬場でインフルエンザやノロウイルスの食中毒によって戦力を削られたチームも過去には多い。緊張感の強い1、2回戦で実力校が力を出せずに敗れることも珍しくない。

今季は、シーズン終盤になって一部声援が解禁になり、今大会では、入学以降コロナ禍で味わったことのなかった迫力ある声援の中でプレーする機会にもなるため、例年以上に会場の雰囲気に左右される可能性もある。ワールドカップでドイツ、スペインを破った日本代表の戦いに感化された選手は多く、前評判は高くないチームも「強豪相手でも粘り強く戦えば勝機がある」とアップセットを狙っている。どこよりも勝ち、ブラボーと叫び続けて優勝旗を手にするのは、果たしてどのチームか。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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