連載:元WBC戦士は語る―侍ジャパン優勝への提言―

大谷、ダルビッシュが侍ジャパンの中心になる 内川聖一が彼らに重ねるイチローの存在感

小西亮(Full-Count)

WBC参加を表明したダルビッシュ有の存在はチームにとってとても大きいと内川聖一は話す。その理由とは? 【写真は共同】

 国を背負って戦う――。言葉にするのは簡単だが、その大舞台に立つ選手たちの重圧は計り知れない。列島が沸いたサッカーワールドカップが終わって年が明ければ、今度は野球の世界一決定戦が待っている。来年3月に開催される「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」。新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期されていた第5回大会に、侍ジャパンが挑む。

 日の丸の重みを誰よりも知るひとりが、今季限りでNPBから引退した内川聖一内野手。2009年の第2回大会から3大会連続で代表メンバーに名を連ねた。「それぞれ違う立場でWBCに携わらせてもらった」。言わずと知れた「短期決戦の鬼」は、世界一の歓喜も、3連覇を逃した絶望も味わった。自らの経験を踏まえ、日本人メジャーリーガーの存在の重要性を語る。

米国で聞いた君が代、感じた国を背負う重圧

米国に渡って初めて君が代を聞いた時、内川聖一は何を思ったのだろうか? 【写真は共同】

 米西海岸、サンディエゴ。ペトコパークのグラウンドから青空を見上げ、自然と背筋が伸びた。現地時間の2009年3月15日、WBC第2回大会で侍ジャパンは、舞台を米国に移して第2ラウンドに挑もうとしていた。チーム最年少組の26歳で代表入りしていた内川の胸には、東京ドームでの第1ラウンドとは違う思いが込み上げていた。

「アメリカ大陸に行って、君が代を聞いた時、本当に日本代表として戦っているんだなとすごく感じたんです。子どものころから当たり前のように国旗や国歌にふれてきましたが、日本人として頑張らなきゃいけないなと感じた瞬間でした」

 ましてや、2006年の第1回大会から連覇が宿命づけられた身。「やっている時は夢中でしたね。やらなければいけないという思いだけでした」。イチローや岩村明憲、福留孝介、城島健司らメジャーリーガーも加わったチームで「先輩方についていく感じ」。それでも、若手の活力は勢いをもたらし、決勝では宿敵・韓国の流れを断つ好送球も。延長10回に決勝のホームを踏み、歓喜の輪の一員となった。

 若手からベテランまでが集う侍ジャパンでは、それぞれが果たすべき役割も違う。3連覇がかかった2013年の第3回大会に中軸のひとりとして臨んだ内川は、前回とは違う重責と向き合った。

「一生懸命に前を追いかけていくだけだったのが、今度は自分たちが主力になっていかなければいけない責任感を持って大会に入っていきました。3回目の世界一という期待に応えなければいけないと」

 結果的には、準決勝敗退。巻き起こった議論と批判こそ、日本を代表して戦う厳しさ。「当たり前にできたことでも、きちんと意識を向けてやらなければいけない。日々の練習から気を抜いちゃいけないなと改めて思わされました」。野球観に影響を与えるほどの衝撃だった。

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著者プロフィール

1984年、福岡県出身。法大卒業後、中日新聞・中日スポーツでは、主に中日ドラゴンズやアマチュア野球などを担当。その後、LINE NEWSで編集者を務め、独自記事も制作。現在はFull-Count編集部に所属。同メディアはMLBやNPBから侍ジャパン、アマ野球、少年野球、女子野球まで幅広く野球の魅力を伝える野球専門のニュース&コラムサイト

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