連載コラム「工藤公康の野球ファイル」

工藤公康さん執筆コラムの連載がスタート! ネット裏から見えたプロ野球の世界

工藤公康

工藤氏(左)の目には、今年のプロ野球がどのように映ったのだろうか 【写真は共同】

 現役通算224勝。ソフトバンク監督時代にはチームを5度の日本一に導き、今年から野球評論家として幅広く活躍する工藤公康さん書き下ろしの連載コラム『工藤公康の野球ファイル』がスタート! これまでの長い野球人生で構築された理論やデータをもとに、ファンの「観戦力」が向上するコラムを本人自らが執筆。記念すべき第1回目は、今季、久々にネット裏からプロ野球を見て感じたことや学んだことについて語ります。

監督を経験したからこそ「見える」もの

プロ野球の監督を経験したことで工藤氏が見えた世界とは? 【写真は共同】

 いち野球ファンというわけではないですが、今シーズンは中立的な立場でプロ野球を見させていただきました。その率直な感想は、監督を経験させていただいたことで見えないものが見えるようになったというか、それまでとは見える世界が変わったということです。

 試合中に起きることは、戦略の一部分に過ぎません。監督は試合前にチームがやろうとする野球や選手の状態など、あらゆる要素を整理します。その上で準備やシミュレーションを繰り返して試合に臨みます。そんな監督の仕事を経験したからこそ、一瞬の勝負や決断までの背景を察することができ、選手の起用法や代打のタイミングなどすべての場面において、それぞれの監督の意図を考えるようになりました。

 また「育成と勝利との両立を目指す」という監督の役割についても考えさせられました。勝ちながら選手を育てることはとても難しい。目の前の選手一人ひとりの育成方法を考えながら、1軍で戦っている以上は勝たなければいけません。

 選手の性格やチームが置かれている状況、チームの未来を見据えて育てなければいけない選手など、考えることは非常にたくさんあります。

 今このタイミングで育てるべきなのか? それとも今は勝つために必要な選手を起用すべきなのか?

 若い選手を使い続ける勇気を持ち、育てながら勝つことの難しさを私自身が経験したからこそ、プロ野球の監督の苦悩を理解できるようになったのではないかなと思います。

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著者プロフィール

1963年5月5日生まれ。愛知県出身。名古屋電気高校(現:愛知名電高校)から1981年、西武ライオンズからドラフト6位指名を受け、入団。西武黄金期を支え、福岡ダイエーホークス、読売ジャイアンツ、横浜ベイスターズに在籍。現役時代は14度のリーグ優勝、11度の日本一に貢献し、優勝請負人と呼ばれた。現役通算で224勝を挙げ、最優秀選手(MVP)2回、最優秀防御率4回、最高勝率4回など数多くのタイトルに輝き、正力松太郎賞は歴代最多に並ぶ5回受賞。2016年には野球殿堂入りを果たした。2011年に現役を引退後、2015年に福岡ソフトバンクホークスの監督に就任。7年で3度のリーグ優勝と5度の日本一に導いた。現在は野球評論家として活動しながら、筑波大学大学院博士課程に進学。スポーツ医学博士取得に向け研究や検診活動を行っている。

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